パリ五輪に世界各地で反対デモ 「人権侵害、環境破壊の五輪は廃止を!」
本田雅和・編集部|2024年8月16日2:21PM
パリ五輪は7月27日未明(現地時間26日夜)、セーヌ川で開会式をした。五輪が「巨大な利権と政治の祭典」であることは歴史が証明しているが、汚職と談合にまみれた前回2021年の東京五輪では、電通など6法人22人の裁判が続き、「負の遺産(レガシー)」の清算はこれからだ。華々しく報道されている「スポーツショー」は人権侵害や環境破壊の上に成立する。「世界中で五輪廃止を」と訴える国際行動が開会式前夜にパリ、東京、ソウル、ロサンゼルスなどの五輪開催都市であった。
東京では新宿・アルタ前に「反五輪の会」や「オリンピック災害おことわり連絡会」のメンバーら約50人が集合。五輪を支えるイデオロギーが「創設者ピエール・ド・クーベルタンの能力主義、人種主義、競争主義、性差別主義、国家主義、エリート主義だ」と道行く人々に問いかけた。外国人観光客を含めて数百人の人々が耳を傾け、賛否両論を表明していた。
今回の開会式で仏当局は、マリ共和国(仏植民地時代はスーダン)との二重国籍を極右から非難されていたラッパー、アヤ・ナカムラに歌わせるなどで、「広く開かれた五輪」をアピールした。
しかし、東京五輪の際に公園や路上から追われた野宿者を含む当事者団体「ねる会議」の小川てつオさんは①パリ当局は首都圏「美化」のために五輪前の1年で1万2545人のホームレスをテントや橋の下、占拠している廃屋や仮の宿から強制退去させた②サハラ砂漠周辺のアフリカ諸国から地中海などを経由してパリ20区の公園にたどり着いた10代の未成年移民ら230人は、11区の市文化施設メゾン・デ・メタロで暮らしていたが最近になって17区の体育館に強制移動させられた③この立ち退きはメタロで「Festival d,été de TOKYO(東京の夏祭り)」という東京の企業のPRイベントをするため。日本企業の宣伝活動がアフリカ出身の若者困窮者の生活の場を奪っている――などと指摘。「東京五輪とパリは関係ないどころか、さらに酷い人権侵害が続いている」という。
セーヌ会場は〝青空監獄〟
仏在住ジャーナリストのコリン・コバヤシ氏はさらに憤る。
「排除されているのは移民や難民だけではない。フランス人も含めた住所不定者、精神障害者、警察にマークされている人々も予防的にパリから締め出されている。『開かれた五輪』のプロパガンダで、高い金網で仕切られたセーヌ河岸に近づけるのは特別席と式典への入場券を持つ金持ちだけ。4万5000人以上の警察官や治安部隊の兵士に守られ、セーヌ会場は〝青空監獄〟さながらです」
都の特別支援学校教員は全国で強制されている「オリパラ教育」の実態を報告。東京五輪後は「学校2020レガシー」と名を変え「総合学習」などで続く。都立学校では25年の東京デフリンピックについての授業をするよう強要されている。フランス在住者によると、当地の「オリパラ教育」は日本のように組織的ではないが、内容は日本とほぼ同じ。アイマスクを着用させパラ競技を〝体験〟したり、選手に手紙を書かせたり、五輪礼賛に生徒の心を誘導する「かなりあざといもの」だ。
呼びかけ人の一人、吉田亜矢子さんは「五輪で大手不動産が公園などを再開発し、貧困者を締め出して環境破壊し、高級商業施設を建設する。貧富拡大と都市の財政破綻。東京とパリだけでなく世界中の開催地で同様のことが起きている」と訴える。通りかかったロス在住の白人男性は「五輪はすばらしいのに」と首を傾げたが、チュニジアの若者やナイジェリアとソマリア出身の黒人女性の2人組は「私たちは植民地主義の犠牲者よ」。ともに熱い賛意を示した。
(『週刊金曜日』8月2日号)