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千代田区が抜き打ちでイチョウ並木を大量伐採 深夜の神田警察通り騒然

2024年4月30日1:57PM

 東京都千代田区(樋口高顕区長)が区道整備を目指している同区一ツ橋の区道「神田警察通り」で、樹齢100年近い(推定)イチョウ並木の伐採工事が4月9日から4日間連続で行なわれた。千代田区民らが集まって抗議する中、残っていた25本のうち、11本の伐採が強行された。現場のある深夜のビル街が騒然となった。

深夜の都心ビル街での伐採作業。切り落とされたイチョウの枝はゴミ収集車に捨てられた。4月12日午前1時ごろ。(撮影/吉永磨美)

 伐採しようとする区側に対し、住民らは「木を伐るな。木を残せ」「区長と話し合いの前に気を伐らないでほしい」と声を上げて訴え、イチョウの木に寄り添い、抱きついて抗議した。

 この伐採については2022年7月、反対する区民10人が伐採工事は違法だとして千代田区長を相手取り、工事代金の支払い中止を求める住民訴訟を東京地裁に起こしたが、判決はまだ出ていない。また、区民有志が今年2月には区長に対し、木を伐採せずに行なう道路整備案を提案し、話し合いを求める要望書を提出していた。

 区民らによると、今回の工事は4日間とも夜の午後9時前後から深夜未明にかけて、作業員や警備員、区職員ら数十人が集まって、行なわれた。工事3日目の12日午前1時ごろも作業員が太い幹に「キュイーン」と唸るチェーンソーを太い幹に当て、伐採作業を行なった。辺りに木の匂いが立ち込め、薄緑色の新芽が付いた枝も次々に切り落とされて引きずられ、用意されたゴミ収集車に捨てられた。

裁判所での陳述前に強行

 区民が保全を求めてきたのは同通り(全長約1・3キロメートル)のうち学士会館付近から神田警察署付近までの230メートルの歩道に面した街路樹のイチョウ32本。すでに7本が伐採され、今回の伐採で残りは14本となった。

 区民ら有志は3年前から夜に、「木の見守り活動」を続けて伐採に反対してきたという。16年7月中旬に区が伐採工事を進めようとした際には、区民からの反対の声で工事が中断されたこともある。

 今回の伐採後の4月15日には区内にある司法記者クラブで記者会見を開催。区民側代理人を務める大城聡弁護士らによると、昨年11月には千代田区が区民ら10人に対し、今回の伐採工事を実施した区間の歩道や車道への立入り禁止(午後8時から午前6時まで)を求める仮処分を申し立てており、これを受けて東京地裁は今年3月11日、工事の作業区域に限って立入りを禁じる仮処分命令を前記10人中8人に出している。

 それに対して区民らは同月21日には異議を申し立て、裁判所と双方の代理人が調整のうえ東京地裁で行なう陳述の期日が5月13日に決まっていたところ、その前に伐採が始まったという。

 代理人らは「立入り禁止仮処分の件は街路樹伐採に関する紛争であり、期日を待たずに街路樹を全て伐採しようとする区の行動は司法を著しく軽視するものだ」と批判。さらに今回の工事についても「区の工事関係者が木のそばにいて反対する住民らを規制テープなどで排除し、すべての街路樹を伐採しようとしている。仮処分決定の濫用だ」などと主張している。区民らはこの日、前記した5月の陳述期日を早めるよう、裁判所に上申書を提出したという。

 区によると今回の伐採は予定通り進めたもので、本計画では歩道の幅を広げ、自転車走行空間を確保する目的で道路整備をする方針。区は現在の4車線を3車線に変更、自転車走行空間を含めた形で歩道を現在の2・7~3・5メートルから4・5~6・0メートルに拡大のうえ、サクラの「陽光」などの新たな樹木を植え、今あるイチョウを伐採する予定だ。歩道の幅の変更は区の条例に基づいたもので、計画や工事の契約は区議会の議決を経て、実施されている。

吉永磨美・編集部

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