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女性参政権記念日イベント 男女平等を目指し闘った歴史受け継ぎ次世代へ

岩上喜多・ライター|2024年4月24日5:07PM

 78年前の4月10日は、日本ではじめて女性が参政権を行使した日だ。1946年の同日、戦後初の衆議院議員選挙で約1380万人の女性が投票し、39人の女性国会議員が誕生した。その女性参政権記念日に、パリテ・キャンペーン実行委員会、WAN(ウィメンズアクションネットワーク)、上智大学グローバル・コンサーン研究所の共催で「#今こそパリテ!政治を50/50に」をスローガンに掲げ、東京・上智大学内でイベントが開催された。

女性参政権記念イベントで参加者が集合。(撮影/岩上喜多)

 日本における女性学の草分け的存在である上野千鶴子氏(WAN理事長)は、フェミニズムの歴史を振り返った。日本では70年から始まったとされ、性別役割からの解放を目指すウーマンリブについて、「日常を戦場に変えた。たとえば保育所から電話がかかってきて、子どもが熱を出したという。迎えに行くのはあんたか私かどっちか。これが(日常の)戦場。ここから逃げるなと言ってきた」と説明。また「痴漢は犯罪です、というポスターを見たときは感動した。それまでは痴漢があって当たり前、痴漢にあわないお前に価値はないとすごいことを言われてきた。女性が声を上げることにより、セクシュアルハラスメントも不法行為になったし、DV(ドメスティックバイオレンス)防止法もできた」と、社会を変えてきた運動の成果を評価した。

 助産師で性教育YouTuberのシオリーヌこと大貫詩織氏とGeNuine代表で上智大学学生の徳田悠希氏も登壇。先人たちが権利獲得や差別撤廃のために切り拓いた道について、大貫氏は「先輩方の頑張りによって、建前上は差別的なことを言ってはならないとか女性を性的に扱ってはならないという社会の空気を作ってくださった」と過去の運動に敬意を表明。「私は大学院に通い、家族の大黒柱として稼いでもいる。今は女性も選挙に行けるし、女性がキャリアを積むことや家族の大黒柱になれるくらい社会で働ける。でもそういったことが当たり前ではなかった時代があるということを忘れてはいけないと思う」と語った。

 徳田氏は「女性たちが必死に闘って作ってきた歴史を、どうやって私たちが後退させずにもっといいものにしていくか。きっと私たちくらいの世代が今から考えていくことが、本当に重要になってくる」と提言した。

 上野氏は「(女性を差別してはならないという)建前に変えてきたということは一つの大きな成果だった。人間を全員聖人君子にすることはできない。腹の中のどす黒いものや妬み、そねみを人間からなくすことはできないと思ってる。だけど建前が変わることが社会変革。法律ができることで建前を変えられる」と述べた。

「パリテ」を求める真意

 一方で、変えられなかったことも。上野氏は「労働と雇用に切り込めなかった」と振り返る。「男女雇用機会均等法も譲歩を強いられ、雇用の規制緩和が怒涛のごとく起きた。女性のほとんどは専業主婦ではないのに(主たる労働者は夫とされ)働く女性の過半数が非正規雇用という事態を半世紀かけて作られてしまった。使用者側に寄り切られっぱなしだ」と痛切な思いを語った。

ほかにも課題はある。特に女性議員の少なさは世界の最低レベル。衆議院464人中48人で、約1割。列国議会同盟(IPU)の調査では、下院がある国や一院制をとる190カ国中165位だ。内閣府資料によれば女性ゼロの市町村議会も257ある。パリテ(男女同数)議会はまだまだ遠い。

 パリテ宣言2024では「候補者の男女比に応じて政党交付金を傾斜配分する改革や、衆議院、参議院の比例代表においては男女同数名簿を義務付けるといった制度改革が必要」と指摘。「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟に連帯し、スピーディな改革を求めます」と表明した。

 ただ、パリテ・キャンペーン実行委員会で上智大学グローバル・コンサーン研究所副所長の三浦まり氏は「女性議員や女性リーダーを増やすのは、あくまで通過点。最終目標にしないでほしい」と釘を刺す。「女性リーダーを増やしたその先に、どういう社会、どういう組織、どういう企業を作りたいかは現場の皆さんが考えなきゃいけない」とパリテ(男女同数)議会実現を求める真意を語った。

(『週刊金曜日』2024年4月19日号)

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