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「目に余る米国のダブルスタンダード」宇都宮健児

宇都宮健児|2024年3月22日8:37PM

宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員。

 昨年10月7日に始まったパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘は、3月7日で5カ月となる。ガザ保健当局は、ガザでの死者は3万人を超え、負傷者は7万人以上と発表している。死者の7割が女性と子どもであるということである。また、ガザでは飢餓が深刻化しており、ガザ保健当局は、ガザ北部の病院で2月27日以降、子ども6人が餓死したと発表している。国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ガザ全域で人口約230万人の4分の1に当たる57万6000人が、「飢餓にあと一歩の状態」だと報告している。

 パレスチナ自治区ガザでの人道支援活動の中心的役割を果たしてきたのは、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)であるが、同機関の一部職員がハマスのイスラエル攻撃に関与した疑いが浮上し、米国など10カ国以上が同機関への資金拠出の停止を決めている。日本も米国に同調し、資金拠出を停止している。欧州連合(EU)やノルウェーなどは資金拠出を継続しているが、大口資金拠出国の資金拠出停止は同機関の活動を停止させ、ガザにおける人道危機をさらに深刻化させる恐れが大である。日本は米国に追随するのではなく、同機関に対する資金拠出を復活させるべきだ。

 国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルに対し、ジェノサイド(民族大量虐殺)防止や人道状況の改善を求める暫定措置命令を出している。イスラエルはICJの暫定措置命令を遵守し、民間人に対する無差別攻撃をやめるべきだ。

 国連安全保障理事会では、2月20日、ガザでの即時の人道的停戦を求める決議案が採決されたが、常任理事国の米国が拒否権を行使して決議案は否決された。昨年10月7日にイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、米国がガザに関する安保理決議案で拒否権を発動したのはこれで四度目である。ロシアのウクライナ侵略問題に対する対応と比較しての米国のダブルスタンダード(二重基準)は目に余る。

 日本は3月1日から1カ月間、国連安保理の議長国を務める。日本は米国の顔色をうかがうのではなく、各国の意見を調整し、安保理がガザにおける人道状況の改善と実効的な停戦につながる決議を採択できるよう全力をあげるべきである。

(『週刊金曜日』2024年3月15日号)

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