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「自民党のウラガネ・脱税許すまじ!」 
市民団体が怒りの刑事告発

薄井崇友・フォトジャーナリスト|2024年2月13日3:47PM

 自民党派閥の政治資金パーティ裏金事件をめぐり、ついに市民が刑事告発に踏み切った。最大派閥の安倍派が総務省に収支報告書の訂正を提出し、過去5年間の不記載の総額が約6億8000万円、所属議員の約9割に裏金が渡っていたことを認めた翌日の2月1日、市民団体が同派の有力議員らを脱税の疑いで東京地検に告発したのだ。

2月1日、「」メンバーは東京地検前でデモをしたうえで告発状を提出。「ウラガネ疑惑は法律違反!」と声をあげた。(撮影/薄井崇友)

 告発人は「自民党のウラガネ・脱税を許さない会」(以下、同会。藤田高景代表ら12人)。被告発人はいわゆる“5人衆”(萩生田光一、西村康稔、松野博一、高木毅、世耕弘成の各議員)をはじめとする同派有力議員ら10人で、罪名・罰状は所得税法違反(同法第120条第1項、同第238条)だ。告発事実を「パーティー券のうち売上金目録記載の売上金を正当な理由もなく申告書に記載せず、もって当該各売上金に対する所得税の課税を免れたもの」としたうえで、安倍派の裏金作りの手法を3種に分析。いずれについても所得税逋脱罪が成立するとしている。特に各議員が集めたパーティ券の代金を安倍派に報告もせず売上がなかったように装う手法は「勝手に『中抜き』する一種の横領」で、最も悪質だと糾弾する。

 1日午前11時半、同会メンバーらは「自民党のウラガネ・脱税は許さない!」と書かれた横断幕を掲げながら東京地検前をデモ行進した後に告発状を提出。代理人の一人、長谷川直彦弁護士が「これは脱税だ。厳しく取り調べて中心人物を全員刑務所に入れていただかなければ」と一声。メンバーと賛同人らが「ウラガネ疑惑は法律違反だ!」と声を上げた。

賛同人数千人規模目指す

 その後、午後2時から近くの参議院議員会館で同会が開いた記者会見には藤田代表ら告発人、代理人の各氏のほか、古賀茂明(政策アナリスト・元経済産業省官僚)、雨宮処凛(作家・活動家)、前田朗(法学者・東京造形大学名誉教授)の各氏らも参加した。

告発状提出後の記者会見。古賀茂明さん、雨宮処凛さんも発言。(撮影/薄井崇友)

 告発状は政治家の収入と課税の関係についての唯一の法規として所得税法の第9条第1項第19号を挙げたうえで、非課税所得として申告・納税が不要とされる条件を定めた同号の条文を引用している(※)。会見で発言した古賀氏はここに言及。「普通に考えるなら報告書を出していないだけでは非課税にならない。中小零細企業の方々が(納税をめぐり)厳しく追及されている今、政治家だけが3000万円までは良しとされるような、非常におかしなことが起きている。これを放置するのは明らかな差別。なぜ裏金にするのか? それは知られたら困るからだ」と批判した。 

代理人の一瀬敬一郎弁護士は「この問題は自民党政治の腐敗。政治資金規正法に限界がある中では原点に返ってこの問題を脱税として考えていくべきだ」と述べた。

 記者会見の最後には藤田代表が今後の抱負として「賛同人が数千人の規模となるまで運動を広げていきたい」と呼びかけた。賛同人の1人、横浜市在住の60代男性は「インボイスなどで市民は厳しく増税されているのに、自民党の脱税は許されない。『沈黙は共犯』だと思い声を上げにきた」と思いを訴えた。

※所得税法の第9条第1項第19号
「公職の候補者が選挙運動に関し法人からの贈与により取得した金銭、物品その他の財産上の利益で、同法第百八十九条(選挙運動に関する収入及び支出の報告書の提出)の規定による報告がされたもの」

(『週刊金曜日』2024年2月9日号)

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