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「ピエール瀧氏有罪理由での助成金不交付は違法」 
映画『宮本から君へ』訴訟で製作会社側が逆転勝訴

臺宏士・ライター|2023年12月5日7:14PM

 文化庁所管の独立行政法人・日本芸術文化振興会(芸文振)が、映画『宮本から君へ』(2019年公開)に対する助成金(1000万円)の交付を内定しながら、出演した俳優・ピエール瀧氏が麻薬取締法違反の罪で有罪が確定したことを理由に「国が薬物使用を容認するメッセージを発信することになりかねない」などとして不交付とした決定の違法性が争われた訴訟の上告審判決が11月17日、最高裁第二小法廷であった。尾島明裁判長は原告の製作会社・スターサンズ(東京)の訴えを退けた二審・東京高裁の判決を破棄し、不交付処分は「理事長の裁量権の範囲を逸脱し違法」として取り消した。4人の裁判官全員の一致した判断だった。

スターサンズ代表だった河村光庸氏は昨年6月死去。逆転敗訴した二審判決を「今の裁判制度と裁判官の資質を疑う」と批判していた。(昨年3月3日撮影/臺宏士)

 一審・東京地裁(21年6月)は、違法な取り消しだとして原告の訴えを認めたが、東京高裁(22年3月)は「薬物乱用の防止という公益の観点から不交付決定したからといって妥当性を欠いているとはいえない」などと判断していた。

 尾島裁判長は「一般的な公益が害されることを理由とする交付の拒否が広く行われるとすれば、公益がそもそも抽象的な概念であって表現行為の内容に萎縮的な影響が及ぶ可能性がある。芸術家等の自主性や創造性をも損なうものであり、表現の自由の保障の趣旨に照らしても、看過し難い」と指摘。「(瀧氏が)助成金交付により直接利益を受ける立場にあるとはいえないこと等からすれば、(国が薬物使用を容認するという)メッセージを発したと受け取られるなどということ自体、にわかに想定し難い」と述べ「(不交付決定は)重視すべきでない事情を重視した結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたもの」と芸文振側の主張を認めなかった。

 最高裁が芸術分野への公的助成の在り方について判断したのは初めてという。 弁護団は「歴史的判決」と評価した。

(『週刊金曜日』2023年12月1日号)

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