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オウム真理教により殺害された坂本弁護士一家慰霊の旅

宇都宮健児|2023年9月12日3:31PM

 8月26、27日、「坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会」の呼びかけに応えて「坂本弁護士一家慰霊の旅」に参加した。慰霊の旅には、救う会の弁護士のほか、日本弁護士連合会(日弁連)の小林元治会長や日弁連の弁護士業務妨害対策委員会の弁護士なども参加した。

 慰霊の旅では、新潟県上越市名立区にある坂本堤弁護士のメモリアル、富山県魚津市にある坂本都子さんのメモリアル、長野県大町市にある龍彦ちゃんのメモリアルを訪問し、メモリアルの前で追悼式を行なった。追悼式には、地元の弁護士会会長や地元自治体の市長や副市長なども参加した。

 坂本弁護士一家は、1989年11月3日の夜から4日の未明にかけてオウム真理教の幹部らによって殺害され、遺体は5年10カ月間、新潟県、富山県、長野県の山中に埋められていた。事件発生当時、坂本堤弁護士は33歳、都子さんは29歳、龍彦ちゃんはまだ1歳2カ月であった。龍彦ちゃんが生きていれば、今年で35歳となる。

 95年9月に3人の遺体が発見された後、3人の遺体が埋められていた近くに現在はメモリアルが設置されている。

 坂本弁護士の妻都子さんは、84年4月から88年1月まで私の弁護士事務所で働いていた。都子さんが私の事務所に入所した当時は、堤さんはまだ司法試験の受験生であったため、都子さんが私の事務所で働きながら、家計を支えていたのである。

 その後、堤さんが、司法試験に合格し、弁護士となり、87年に横浜法律事務所に就職した。都子さんは龍彦ちゃんを出産するので、88年1月に私の事務所を退職した。事件が発生したのは、その翌年のことである。

 坂本弁護士一家殺害事件は、弁護士業務に向けられた、家族をも巻き込んだ非人道的で卑劣極まりない妨害事件である。

 弁護士は基本的人権擁護と社会正義の実現を使命としている(弁護士法第1条1項)。弁護士が業務妨害を受けて萎縮してしまうと、市民の人権が守られなくなり、民主主義社会が危機に陥ることになる。

 慰霊の旅に参加した弁護士は、メモリアルの前で坂本弁護士一家殺害事件を風化させることなく、坂本弁護士の志を継承し、卑劣な業務妨害に屈することなく、基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を果たしていくことを誓い合った。

(『週刊金曜日』2023年9月8日号)

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