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暇空茜氏、のりこえねっとを訴えた裁判で敗訴 
「不法行為」との主張認めず

小川たまか・ライター|2023年9月5日7:07PM

 インターネット上で「暇空茜」を名乗る男性が、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」(通称:のりこえねっと)に虚偽の著作権侵害通報をされたとして165万円の損害賠償を求めていた民事訴訟の判決が8月24日に東京地裁中目黒庁舎で言い渡され、中島基至裁判長は原告の請求を棄却した。

判決後の報告集会で思いを語る辛淑玉氏(中央)。(撮影/小川たまか)

 暇空茜こと水原清晃氏は、昨年から一般社団法人Colaboや、その代表の仁藤夢乃氏に対してインターネット上で繰り返し言及。同団体に対して会計報告に不正があるとする住民監査請求を行なった。結果は経費192万円が認められなかったものの、それ以上の金額を団体の自主財源から持ち出しで行なっていたことが明らかになり、返金措置は取られていない。

 水原氏はX(旧ツイッター)上で26万人以上のフォロワーを持ち、ユーチューブチャンネルの登録者数は20万人以上。ブログサービス「note」上で昨年から「今回の戦いへのカンパを募集します」と呼びかけ、7月31日までに総額で1億1104万7149円が集まったことや、そのうち6795万0386円を使用したことを報告している。カンパの使途は主に訴訟費用や「本件に必要とした経費」と説明されている。

 Colabo側は昨年11月、水原氏に対して計1100万円の損害賠償などを求める訴訟を提起。水原氏が同団体の活動について「10代の女の子をタコ部屋に住まわせ、生活保護を受給させて」などと言及したことをデマと主張している。

 一方で今回の訴訟は、水原氏が原告となりのりこえねっとを訴えたもの。昨年12月に水原氏が自身のユーチューブチャンネルで仁藤氏の画像を使用。著作権を持つのりこえねっとがユーチューブに著作権侵害通報を行なったところ2件の申請が受理された。水原氏側は、これを虚偽申し立てであり不法行為にあたるとして訴えた。

 判決では、著作権がのりこえねっとにあることが確認された。水原氏側は『毎日新聞』に掲載された仁藤氏の画像が仁藤氏から提供されたものであることを理由に著作権者が仁藤氏だと主張したが、裁判所はのりこえねっとの許諾を得たうえで仁藤氏が毎日新聞社に画像を提供したと判断した。

自ら敗訴予想した原告

 判決後のオンライン会見で、のりこえねっと側の代理人を務めた神原元弁護士は「ふたを開けたら著作権はこちらに。裁判としてはまったく面白くない。ただ、それとは別に弁護士を20年やっている中で体験したことのない裁判だった。原告は訴状1本出して、それ以上の反論がなかった」「著作権があるという証拠を見たら、参りましたと。常識ではちょっと考えられない裁判」と話した。

 また、のりこえねっとの著作権侵害の申し立てから4日で水原氏側の提訴が行なわれた点については「普通の弁護士だったら(依頼者が言う通りなのかどうか)調べますよね。4日ということは何も調査せずに裁判を起こした」「こんなことで社会に迷惑をかけることが許されるのか」と憤った。

 のりこえねっと代表・辛淑玉氏は、訴状が公開されている同団体の住所にではなく「理事20人の中からわざわざ上野千鶴子さんを選んで送られていた」として「何の意味があったのかな」。さらに「ただ確かなのは、Colabo叩きの一環としてのりこえねっとを使ったということ」「のりこえねっとにとっては、申し訳ないけれど軽い裁判でした。でもそれにつきあわなければならないしんどさがある」と続けた。のりこえねっと側は著作権侵害で水原氏を7月に提訴し、訴訟が続いている。

 水原氏は提訴前に「俺は不当な攻撃されると燃えるんだよ 思い知らせてやる」(昨年12月19日)などとXに投稿。勝訴の自信があったと見られるが、その後は「損害論の話をする前に結審だったので、棄却判決が出るんだろうと思う」(6月18日配信のユーチューブ動画より)と自ら棄却判決を予想するなど、トーンダウンした。

 水原氏の代理人を務める垣鍔晶弁護士の事務所に電話すると、受付担当者が「お待ちください」と言った後に電話が突然切れ、かけ直すと「外出中」とのことだった。

(『週刊金曜日』2023年9月1日号)

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