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リニア関連道路建設で住民立ち退き問題浮上 
相模原市長に批判続出

樫田秀樹・ジャーナリスト|2023年9月1日2:21PM

 リニア中央新幹線は2027年の開業を目指してJR東海が建設を進めているが、橋本駅(JR東日本・京王電鉄)に隣接するリニア神奈川県駅(建設中)では、地元の相模原市が開業に合わせて駅前広場やアクセス道路建設などの周辺開発事業に乗り出している。

8月20日、相模原市での対話集会で本村市長に質問する住民(左)。(撮影/樫田秀樹)

 その一つが駅周辺に新設される5本の道路だ。中でも最長となるのが西橋本地区に造られる長さ920メートルの「大西大通り線」。5本の道路には計約330億円の市税が投入され、同線にはその半分以上を占める約174億円が使われる予定だ。

 しかしこの計画が公表されたのは昨年3月末。計画地に住む竹村高雄さん(仮名)は「寝耳に水だった」と振り返る。

 竹村さんが驚いたのは、そこが地下約20メートルで建設予定のリニアルート直上で、約100軒が立ち退き対象になることだった。

 地下でリニアのトンネル工事を行なうにはJR東海が「区分地上権」を設定する必要がある。地権者が所有する土地を、事業者が使用できるように設定する権利だ。市民団体「リニア新幹線を考える相模原連絡会」によれば、その設定を拒む家族も一定数いる。だが今回の道路計画が東京都に事業認可されてしまえば、計画沿線周辺の家屋は否が応でも立ち退き対象とされてしまう。

 市は昨年から住民説明会を何度か開催した。そこで明らかになったのは、大西大通りの工区が第1と第2とに分かれ、工期がそれぞれ約10年。第1工区については今年10月から測量に入り、24年4月から用地取得を始める、との作業スケジュールだった。

 8月20日。相模原市の住民団体「大西大通り線新設に反対する会」主催の、本村賢太郎市長との対話集会が行なわれた。

 集会では約15人が市長に質問や意見を投げた。住民の一人は「大西大通り線って、我々を追い出してリニア建設を容易にするための計画ですね!」と市長に迫った。またある住民は「私はここにもう50年以上住んでいる。この道路で工場も自宅も失うんですよ!」。さらに「市はこれまで55回の説明会を行なったというが、真っ赤な嘘です!」と批判する住民もいた。

 こうした声に本村市長は「これほど多くの人に理解していただいていない。今までの説明が足りなかった」と反省の言葉を述べ「今後も対話を続けます」と約束した。だが一方で「結論ありきで話をするのではない」との姿勢で対話集会に臨んだはずなのに「この事業をやらせていただきたい気持ちに変わりはない」とも発言した。

市は「計画に変更はない」

 閉会後、私は本村市長を廊下に追いかけ「対話の継続で、スケジュールは一時中断するのか」と尋ねた。

「それは会場にいる職員に尋ねてください」との市長の答えを受け、同じ質問を職員に投げた。そしてわかったのは「計画に変更はない」ということだった。

 だが疑問が残る。なぜならリニア開業予定の27年に工事を間に合わせるには、その数年前には第2工区でもJR東海の区分地上権の設定、もしくは市の用地交渉が必要だからだ。

 そこで私が「工期10年とされる第1工区の竣工を待ってから第2工区の用地取得を始めるのか」と質問すると「いえ、用地交渉だけは第2工区でも再来年から始めます」との回答を得た。

 これを知ったある住民は「結局、リニア工事の前に私たちを追い出すつもりだ」と声を荒らげた。

 だが「用地取得を拒否する住民に強制収用を適用するのか」との質問に、職員は「それは絶対にやらない」と声を強めた。

 これを逆に考えれば、強い拒否感を持つ住民が、間もなく始まる測量、そして来年始まる用地交渉に判を押さなければ、この道路計画が実現しないことも意味する。住民側は近くを走る国道16号線の拡幅で対処できるはずだと代替案を提示しているが、それに今後の対話で本村市長がどう耳を傾けるかを注視したい。

(『週刊金曜日』2023年9月1日号)

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