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個人情報保護委員会がデジタル庁に立ち入り検査で行政指導も

佐藤和雄・編集部|2023年7月24日5:52PM

 普段、ほとんどニュースになることのない政府の個人情報保護委員会(以下、個情委)が『朝日新聞』朝刊1面トップで報じられたのは、7月7日金曜日のことだった。「デジ庁に立ち入り検査へ」「マイナ問題 管理に不備」「情報保護委 行政指導も視野」という3本の大きな見出しが紙面を飾った。NHKがその日正午の全国ニュースで追っかけ、読売、毎日、産経、日経といった全国紙も翌日朝刊で記事に大小の差はあるが、一斉に報じた。

河野太郎デジタル大臣。(デジタル庁の記者会見動画から)

『朝日新聞』の鮮やかな特ダネである。とはいっても、個情委がひた隠しにしていた情報を入手した、というわけではない。実は2日前の7月5日午後2時半から委員会が開催され、その際の議題の一つが「マイナンバーカード等に係る各種事案に対する個人情報保護委員会の対応状況について」だった。公式サイトでは委員会の開催および、対応方針を示す資料も公表されている。

 マイナンバーやマイナンバーカードをめぐっては他人の口座情報とひもづけられるなど個人情報の漏洩などのトラブルが相次ぎ、岸田文雄政権を揺るがすような事態になっている。おそらく『朝日新聞』記者は、この問題での個情委の対応を注視していたのだろう。

権限行使の要否を検討

 さて、「マイナンバーカード等に係る各種事案に対する個人情報保護委員会の対応状況」(以下、「対応状況」)と題された資料によれば、問題となったのは公金受取口座の登録で本人もしくは自治体の手続き支援員による操作ミスで、別人のマイナンバーと本人の銀行口座などの情報を誤ってひもづけ、銀行口座の情報が漏洩してしまった事案。

 なぜ、こうしたことが起きてしまったのか。

 個情委の分析によれば、「デジタル庁が、公金受取口座の登録などに関する事務で、自治体の支援窓口の端末を利用する際、正確な操作手順の徹底のほか、操作手順に伴うリスクの軽減などについて、リスク管理とその対策ができなかった」ためだ。

 担当者に、5日の委員会での説明・発表に至る経緯を聞いてみた。

「今年6月30日に番号法(編集部注=マイナンバー法のこと)に基づく報告徴収に対する報告書を受領しました。今後、より詳細を把握する目的で番号法に基づく立ち入り検査を検討する、ということです」

 丁寧な応対ながらその説明は、「対応状況」に書かれた文言から一ミリも踏み出してはいない。さすが情報を保護する組織である。

「対応状況」には立ち入り検査によって「詳細な事実関係を把握し、問題点に応じた権限行使の要否を検討中」と書かれている。「権限行使の要否」とは?

「(デジタル庁からの)報告書、そして立ち入り検査によって問題が見受けられた場合、法に基づき指導、勧告ができるので、これを実施するということです」

 簡単に言えば、行政指導をする、ということのようだ。

 では立ち入り検査はいつ実施するのか? それを担当者に聞くと――。

「いつ実施というよりも、『立ち入り検査を検討する』という状況に尽きます。個別のことにはお答えできません」

 とはいえ、ここまで世間の注目を集めている事案である。1カ月も2カ月も先、ということではないだろう。

 一方、立ち入り検査を受ける側のデジタル庁。河野太郎デジタル大臣は7日の閣議後の記者会見でこの件について「現時点で何か決まっていることはない。いずれにせよ求めに応じて適切に対応してまいります」と淡々と述べた。

(『週刊金曜日』2023年7月21日号)

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