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「隠蔽された朝鮮人虐殺」、関東大震災100年展開催中 絵巻で惨禍の史実に向き合う

平畑玄洋・編集部|2023年7月18日7:00AM

企画展初日の記者会見。新井勝紘さん(中央)、村上啓子さん(左)ら。(撮影/平畑玄洋)

「関東大震災100年―隠蔽された朝鮮人虐殺」と題した企画展が7月5日、コリアタウンとして知られる東京・新大久保の高麗博物館で始まった(※下に詳細)。虐殺場面を描いた大正時代の「関東大震災絵巻」が初めて一般公開されたほか、当時の写真や目撃証言をまとめたパネルなどが展示されている。同館の村上啓子理事長は「一人ひとりが歴史に向き合い、未来に希望の持てる共生社会を作る一助になれば」と話す。

 会場に入ってすぐ目に飛び込んでくるのは、元専修大学教授の新井勝紘さんが2年前にオークションで見つけた全2巻の「関東大震災絵巻」(1926年)だ。いずれも縦36センチメートルで、長さは1巻が14メートル、2巻は18メートルに及ぶ。1巻の終盤に虐殺の様子を描いた場面が登場する。

「約100年経っても保存状態が良く、それほど色あせていない」

 新井さんがそう指摘する通り、竹やりや刀で襲われた犠牲者の傷口から流れる鮮血の色は生々しい。在郷軍人であろうか、軍服を着た人たちが、負傷した人たちに向かって、なおも刀を振り下ろそうとしている。

 作者は福島県泉崎村出身の教員画家、大原彌市と考えられる。巻物の序文にはこの惨禍に遭遇しなかった人へ「省慮の念を促し(たい)」と書かれてあった。「描く側も非常につらい場面だったと思うが、あえてものすごくリアルに描いている。ちゃんと記録に残しておかなければとの意識が強く働いたのだろう」と新井さんは語る。

 子細に見ると、ゴザの上に遺体が無造作に積み重ねられた場面も描かれている。同じ絵巻には担架に乗せられた日本人の震災犠牲者が、テントを張った「死体収容所」へ運ばれる場面もある。この二つを比較することで遺体の取り扱いが、いかに違うかがわかる。

 会場の壁には、童画家の河目悌二が描いたとされる水彩画のパネルも展示されている。後ろ手に縛られた人物に向かって3人の男が棒状のものを打ち下ろし、殴打された人物は額から血を流して今にも倒れそうだ。白い制服を着た警官とみられる人物は、この虐殺行為に背を向け、周りで騒ぎ立てている群衆を制止しているように見える。

「本来ならば殺害行為を止める役割の警察官が我関せず。傍観している民衆も含めて虐殺行為に加担している。そのことをこの絵は訴えている」と新井さんはみる。

「僕たちがこの絵を深読みし、きちんと読み取って若い世代に伝えることを大原さんは期待していたのではないか」

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