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「差別されない権利」認める 「全国部落調査」裁判、東京高裁も地名一覧公表差し止め

平野次郎・フリーライター|2023年7月16日7:00AM


東京高裁判決後、裁判所前での旗出しで結果を伝える原告側弁護士。(提供/解放新聞社)

 被差別部落の地名などを一覧できる「全国部落調査」をインターネットなどで公表するのは差別を助長し拡散するとして、部落解放同盟と被差別部落の出身者234人が川崎市の出版社「示現舎」に公表の差し止めと約2億6500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が6月28日、東京高裁(土田昭彦裁判長)であった。判決は一審・東京地裁が認めなかった「差別されない権利」の侵害を認め、差し止めの範囲を一審より広げるとともに賠償額も約490万円から550万円に増額した。

 判決によると「全国部落調査」は戦前に政府系団体が刊行した報告書で、41都府県の約5360部落の所在地や世帯数、職業などを記載している。示現舎は2016年2月に同書の復刻版を出版・販売すると告知し、その地名一覧などをウェブサイトに掲載した。

 原告らは、地名一覧の公表によって結婚や就職の身元調査に使われるなど差別にさらされ、プライバシー権や差別されない権利などの人格権を侵害されると訴えた。一審判決はプライバシー権の侵害は認めたが、差別されない権利の侵害は「内実が不明確」として退けた(本誌21年10月8日号参照)。

 高裁判決は「認定事実」として、結婚差別や就職差別などを防止する目的で「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」が1985年に制定されたが、2021年8月に宇都宮市の行政書士が探偵の依頼で戸籍謄本を不正に取得して戸籍法違反容疑で逮捕されるなど身元調査差別が絶えないことなどを追加。部落問題についてこう認定する。

〈現代社会においても、なお著しく基本的人権を侵害され、特に近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという、もっとも深刻にして重大な社会問題である〉

 判決は争点の「人格権侵害の有無」についてはこう述べる。

〈憲法13条は、すべて国民は個人として尊重され、生命、自由及び幸福追求に対する権利を有することを、憲法14条1項は、すべて国民は法の下に平等であることをそれぞれ定めており、その趣旨等に鑑みると、人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有するのであって、これは法的に保護された利益であるというべきである〉

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