手柄のために中小企業を血祭りにあげながら、偽証罪で起訴はされないと高を括る警察
粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年7月9日7:00AM
見えてきた警部補の“嘘”
公安部は大川原化工機製の噴霧乾燥機には熱風殺菌により機械内部に残る菌を殺滅できる性能があるとしていた。殺滅できないと炭疽菌など猛毒の菌が残り、危険で作業者も扱えない。警視庁は「安全に扱えるから兵器転用できる」として、経済産業省が示した輸出禁止の該当項目に合致させたかったが、実際は同機には熱風を吹き込んでも温度が低いまま残る部位があることが実証されていた。
弁論で原告代理人を務める高田剛弁護士から前述の弁解録取書について「島田氏が署名を拒否したことはあったか」と問われた安積警部補は「ありません」、また、島田発言で録取しなかった部分があったことへの問いには「客観事実と矛盾するので録取できない」と答えた。何が客観事実かを確かめるのが取り調べのはずだ。警視庁の見立てに合わない都合の悪い供述は記録に残さない方針だったことがここで図らずも露呈した。
実はこの噴霧乾燥機の件で安積警部補は防衛医科大学校の四ノ宮成祥学校長に捜査であることを明かさず事前に意見を求めていた。安積警部補の聴取報告書では四ノ宮氏が「噴霧乾燥機は輸出規制に抵触する」と言ったように書かれている。だが今年1月、同大学校で取材した筆者に四ノ宮氏は「私はそんなことを言っていない。微生物の専門家で機械は専門ではない私は噴霧乾燥機など見たこともなく、そんなこと言うはずがない」と不信感を表していた。四ノ宮氏は今回の訴訟で安積警部補の嘘を明示した陳述書を裁判所に提出しており、大川原社長は尋問の最後に「四ノ宮さんのわかりやすい陳述書に感謝しています」と話した。
手柄のためには中小企業を血祭りにあげながら、偽証罪で起訴はされないと高を括る警察は法廷で嘘をつき続けるのか。
(『週刊金曜日』2023年7月7日号)