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手柄のために中小企業を血祭りにあげながら、偽証罪で起訴はされないと高を括る警察

粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年7月9日7:00AM

東京地裁前の大川原社長(左)と島田氏(右=本人の注文により、後ろ姿)。(撮影/粟野仁雄)

 2020年3月、警視庁公安部は横浜市の機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長ら幹部3人を「兵器転用できる噴霧乾燥機(液体等を粉末にする機械・スプレードライヤ)を中国へ不正輸出した」との外為法違反容疑で逮捕した(後に韓国向けも追加)。だが、3人を起訴した東京地検は初公判直前の21年7月、「法規制に該当することの立証が困難」と突然起訴を取り消し、東京地裁は公訴を棄却。刑事裁判は終了した。

 一貫して容疑を否認した大川原社長と島田順司元取締役の勾留は21年2月まで約11カ月間続いた。途中で体調を崩し胃がんと判明した相嶋静夫元顧問は勾留執行停止されたが、元顧問は同年2月に死去。不正輸出報道で同社は存亡の危機に陥った。同年9月、大川原社長や相嶋氏の遺族が東京都(警視庁)と国(東京地検)に対し「逮捕や起訴は違法」として総額約5億6500万円の損害賠償請求を東京地裁(桃崎剛裁判長)に起こした。

 6月16日と23日に開かれた口頭弁論(証人尋問)で、大川原社長が「(取調官に)『黙秘すると不利になる』と言われ不安になった。銀行の取引停止や倒産、社員、家族のことが不安になった」と証言。相嶋氏の子息は「父は『何度説明してもわかってくれない』と言っていた。反省どころか反論する国や都に心を痛めている」と訴えた。

 島田元取締役も、自身の取り調べを担当した公安部の安積伸介警部補に「社長も相嶋も認めているぞ」と言われたという。被勾留者が互いに連絡できないことを利用し、嘘を吹き込む警察得意の「切り違い尋問」だ。調書の内容が違うので修正を申し出たもののペンも貸してくれず「『修正する』と言ってパソコンキーを叩いていたが、見せてくれなかった」と証言。事実でないことが書かれた弁解録取書を見て「日本の警察はこんなことをするんですかと言った」と怒り、紙を破ろうとして止められたことも明かした。弁論の最後には「警察や検察は自分らの公権力を誤って使い、無実の者を傷つけ苦しめ、時には人を死なせるという認識を持ってほしい。相嶋さんは無実を知ることなく他界された。ぜひ『ごめんなさい』と言ってほしい」と思いを述べた。

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