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元暴力団員が口座開設拒否の銀行を「不合理な差別」と提訴

平畑玄洋・編集部|2023年6月27日7:00AM


元暴力団員が口座開設をめぐり、銀行を相手取って提訴した水戸簡裁。(撮影/平畑玄洋)

 茨城県内に住む元暴力団員の50代男性が4月18日、口座開設を拒否したみずほ銀行を相手取り「差別によって人格権を侵害され、精神的苦痛を受けた」として10万円の損害賠償を求めて水戸簡裁に提訴した。暴力団からの離脱後、5年の経過を口座開設の要件とする金融機関は同行を含めて多い。だが、男性は組抜けから5年以上経っていた。代理人弁護士によると、口座開設の拒否をめぐり、元暴力団員が慰謝料を求める訴訟は全国でも初めてではないかという。

 訴状などによると男性は2017年5月に県警の支援で指定暴力団を辞め、建設関連の会社で働いている。生活口座用の普通預金口座の開設を今年4月12日にみずほ銀行水戸支店に申し込んだところ「総合的判断」を理由に拒否された。就労先からの給与振り込みのほか、公共料金、子どもの給食費の引き落としに使う予定だった。

「総合的判断」の内容について同行から詳しい説明はなかった。だが、男性の代理人を務める弁護士の篠崎和則さんは「全国的にも元暴力団員の口座開設は難しく、今回も原告が暴力団員だったことが理由であることは間違いない」とし、「不合理な差別だ」と訴える。訴状では「(口座開設の拒否は)原告の就労の機会を奪い、社会復帰を阻害する」と主張した。

 生活口座はクレジットカードや携帯電話の契約、インターネット決済など生活の隅々にかかわる。篠崎さんは「開設できないと不利益が大きい」と指摘。「(口座開設後は)入出金の履歴を見れば生活口座であることが分かり、銀行側のリスクは考えにくい。開設拒否は過剰反応だ」と話す。

『だからヤクザを辞められない』の著書がある龍谷大学犯罪学研究センター嘱託研究員の廣末登さん(犯罪社会学)は「口座が作れないと、離脱を考える組員が暴力団側に引き留められる口実になる」と懸念する。「排除の論理を徹底すると、生きるために再び犯罪に手を染める者が出かねず、ひいては新たな被害者を生むことになる」

 廣末さんは元暴力団員や特殊詐欺の疑いで逮捕された未成年の就労支援に携わった経験から「口座や携帯電話がなければアルバイト先を見つけるのも難しい」と話す。

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