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関東大震災100年、朝鮮人・中国人虐殺追悼大会開催へ

小川直樹・編集部|2023年6月6日7:00AM

差別・偏見は今も残る

 5月11日の記者会見で、岩波書店の岡本厚・前社長は「100年経ってもなおこの歴史認識なのか、忸怩たる思いだ。政府の歴史認識は1970、80年代よりも後戻りしている。正しい歴史を知らずして未来は語れない」と憤る。

 ジャーナリストの安田浩一さんは「今も自然災害が起きるたび、ネット上では荒唐無稽なデマが飛び交う。多くは外国人の犯罪を示唆するものだ。100年前の記憶は薄れたわけでなく、リニューアルを重ね、差別と偏見が根強く残されている」と指摘した。

 在日中国人2世の林伯耀さんの父親は震災当時、東京にいて警察に保護を求め、命を落とさなかった。その恐怖体験を聞いてきた林さんは「今、嫌中国や中国脅威論があおりたてられ、戦争機運が起こっている。日本政府は100年前の虐殺の反省をせず、なかったことにする。100年前の問題に日本社会は真摯に向き合い、犠牲者の尊厳や名誉の回復をしなければならない」と強調した。

 朝鮮人虐殺をテーマにした作品制作を手がけ、追悼行事の呼びかけ人となっている映画監督の呉充功さんは「殺された朝鮮人たちの遺族には何の知らせもなく、遺骨も返されなかった。朝鮮人犠牲者の名簿は今もなく、世の中に存在しない人間にされた。死者に対する冒涜だ。遺族一人の人生、犠牲者一人の人生から関東大震災を見てほしい」と訴えた。

 5月23日の参議院内閣委員会で、杉尾秀哉議員(立憲民主党)が朝鮮人・中国人虐殺について、政府の認識や、過去の関係記録を調査する考えはあるのか、質問した。谷公一・防災担当大臣は「政府として調査した限り、政府内に事実関係を把握することができる記録が見当たらなかったことから、ご指摘の対応を取ることは困難」と、従来の答弁書と同じ言葉を何度も繰り返し、調査する考えはないと述べた。

(『週刊金曜日』2023年6月2日号)

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