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判決に「差別」を書き込めるか 民団徳島県本部脅迫事件が結審

石橋学・『神奈川新聞』記者|2023年6月1日7:00AM


民団徳島県本部に送りつけられた脅迫状。(提供/民団中央本部)

「差別」と断じることに及び腰な刑事司法の固い壁がまた一歩動いた。

 在日本大韓民国民団(民団)徳島県地方本部に銃撃を予告する脅迫状を送り付けたとして、脅迫の罪に問われたヘイト団体「日本第一党」元党員、岩佐法晃被告人(40歳)の初公判が5月12日、徳島地裁(細包寛敏裁判官)であり、検察側は「現在世間的に問題となっているヘイトクライム(差別犯罪)であり、厳しく対処する必要がある」として懲役10カ月を求刑した。

 論告で「ヘイトクライム」と明示的に指摘されるのは初めて。被告人は起訴事実を認め、弁護側は執行猶予を求めて即日結審した。5月31日に言い渡される判決で「差別を動機にした犯罪」として裁かれるかに注目が集まる。

 起訴状によると、被告人は2022年9月11日から14日の間、「反日政策ヲ続ケル様デアレバ、次ハ実弾ニ寄ル消化ニヨッテ浄化スル」などと書いた封書を投函し、民団関係者らを脅したとされる。

 検察側は論告で「根底に韓国政府や韓国人への差別的感情が存在し、悪感情に基づき民団の構成員に恐怖心を与えようとした。一方的に怒りを募らせ犯行に及び、身勝手で悪質」と非難。「ヘイトクライム」だと指摘した上で「人種、民族、宗教など特定の属性を有する個人や集団に対する偏見や憎悪が基で引き起こされる犯行は、いかなる理由であれ正当化されるものではない」と指弾した。

 意見陳述に立った民団徳島県本部の姜盛文団長(45歳)も単なる脅迫事件ではなく差別を動機・目的にした犯罪であると強調した。21年から名古屋の民団施設、在日コリアン集住地区の京都・ウトロ、大阪のインターナショナルスクール「コリア国際学園」と、同胞を狙った放火が相次いでおり、自身も「殺されるのではないかという思いもよぎった」という。

 閉廷後、姜団長は「検事が『ヘイトクライム』という言葉を使ってくれて良かった。記者会見を開くなどして顔と名前を出したから、報復される恐怖心もあった」と安堵の表情を浮かべた。

「抑止のため厳罰で臨むべきだと一般予防にも踏み込んでいる。ヘイトクライムが頻発する時代となり、腹をくくったように感じる」

 公判を傍聴していたジャーナリスト・中村一成さんは姜団長の言葉にうなずきながら、検察の姿勢を「大きな前進」と評価した。

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