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連載 ”日の丸ヤミ金”奨学金 第16回
「トンデモ判決」の内幕とは?

三宅勝久・ジャーナリスト|2023年5月31日5:11PM

若者から収奪する「日本学生支援機構」

日本学生支援機構の英語版サイトは「ローン」を「Scholarship」(本来の意味は教育資金の給付・学費免除)と表記。訂正の考えはないという。

施行令を無視して一括請求してもよいのだ――。不可解な札幌高裁判決を金科玉条に掲げる日本学生支援機構だが、実はその一審では〝敗訴〟していた。

 昨年11月、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO。以下、支援機構)の英語版サイトを眺めていた筆者は、あることに気がついた。「貸与型奨学金」のことを「Scholarship」と表記している。

「Sholarship Programs for Japanese Students(日本人学生のための奨学金制度)」

 英語の「Scholarship」は教育資金の給付や学費免除を指す。貸付の意味で使うことは普通はない。日本に来たばかりの留学生が見れば「給付」と勘違いするだろう。日本人学生向けとはいえ問題ではないのか。

 支援機構広報課に尋ねたところ次の説明が返ってきた。

〈「Scholarship」という表記は「貸与型奨学金」、「給付型奨学金」の両方について表しているもので、混同することは無いと考えております〉

〈奨学金を申し込もうとする場合には、名称のみを見て判断するのではなく、パンフレットやHP(ホームページ) 上の情報を読み、奨学金の月額や、保証制度、返還がいつ始まるのか、返還する方法等について確認した上で、申込手続きを行うことになるためです〉

〈なお、当機構が発行している「JASSO概要」の英語版では、給付型奨学金は、「Scholarship grants」、貸与型奨学金は、「Scholarship loans」、免除は、「Exemption from repayment」と表記しております〉

 誤解するほうが悪いといわんばかりだ。傲慢さがにじむ。

 支援機構の解釈によれば「Scholarship」にはローンの意味もあるとのことだが、疑わしいのでOECD(経済協力開発機構)加盟38カ国について調査してみた。案の定、公的学生ローンに「Scholarship」の文字を使っている国はただ一つ、日本だけだった。

 給付制度と見せかけて実は貸付制度。通常のローン会社であれば金融庁に行政処分の申し立てがされてもおかしくない紛らわしい表現だ。武富士でも出来なかったことを、支援機構は、元武富士代理人熊谷信太郎弁護士を顧問に迎えて堂々とやっている。

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