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袴田事件再審 検察は立証方針示さず

粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年4月26日7:00AM

4月10日、静岡地裁での三者協議に向かう袴田ひで子さん(中央)と弁護団。(撮影/粟野仁雄)

 袴田事件の再審の進行を決める初の三者協議(裁判所、検察、弁護団)が4月10日、静岡市葵区の駿府城公園横にある静岡地裁(國井恒志裁判長)で午後4時から開かれた。協議の中で弁護側は検察に対し、有罪立証せずに無罪論告を行なって袴田巖さん(87歳)に謝罪することを求めたが、検察側は「7月10日までに方針を示す」と態度を保留。5月から7月まで3回の協議日程は決まったが、初公判の期日が遅れる可能性も出てきた。

 協議終了後、地裁近くの静岡県産業経済会館で弁護団の記者会見があった。巖さんの姉のひで子さん(90歳)は「検察は下ばかり向いていて何を考えて何を言いたいのかわからなかった」と首を傾げたが「ここまでくれば半年や1年くらい、どうってことない」「もう先は見えている。私は安心しております」と笑みを見せた。再審公判で主張したいことを問われると「私ではなく巖が言いたいことを言います。裁判が始まったら考えておきます」と話した。

 検察側が3カ月の猶予を求めたことについて、弁護団の西嶋勝彦団長は「検察の立証方針が示されなかったことは誠に心外。証拠関係からして有罪立証なんかできっこない」と怒りを見せた。村崎修弁護士は「検察は有罪立証ができないから抗告を断念したのにおかしい。記者のみなさんはもっと厳しく書いてくださいよ」と不当性を盛んに訴えた。

 小川秀世事務局長は「裁判所は続審(それまでの審理内容を基に新たな訴訟資料を加味して審理)で臨む姿勢です。覆審(それまでの審理と無関係に審理)だと証拠をまったく出さずに終わることもある」と話した。確定判決(1980年)では警察と検察の巖さんの供述調書の計45通のうち、44通を証拠排除。吉村英三検事が書いた1通だけを採用して有罪とし、死刑判決を確定させている。

 筆者が「静岡地裁の一審で証拠排除した44通を再審で俎上に載せることがあるのですか」と尋ねると、小川弁護士は「控訴審では取り上げられたが、あらためて俎上に載る可能性もある」とした。

 証拠開示された巖さんの取り調べ時の録音などを分析した心理学者の浜田寿美男・奈良女子大学名誉教授は「排除された44通にこそ、袴田さんが事件に全く無知であること、つまり『無知の暴露』が残されている」としている。

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