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特報!
電源開発、大間原発の地震動計算で断層の深さを誤入力
原子力規制庁「極めて重大な事案」

伊田 浩之・編集部|2023年4月5日1:23PM

電源開発の回答

 筆者は、電源開発に、今回のミスへの基本認識に加え、①基準地震動に最大どの程度影響があるか、②規制庁に提出する書類を作成するのに使っている下請け・孫請け企業の実数、③今後チェックする地震動、地下構造、津波の点検箇所数、④関係自治体への対応方針などを聞いたが、同社広報室は細かな点には触れず、次のように回答した。

〈今回の件について、会社としても重く受け止めており、今後、再発防止策の策定及び審査資料の点検に最優先に取り組んでまいります。/なお、点検結果については、今後の審査会合の中で再発防止策とともに説明してまいります。/ご質問の大半は、この点検結果にて明らかにされるものと考えております〉

実はミスだらけ

 実は、同庁の審査で電源開発が犯してきたミスが判明したケースは多い。14年に国と電源開発を訴えた大間原発建設差止等訴訟の原告函館市代理人の只野靖弁護士によると、過去に次のミスがあったという。

①18年10月26日判明。一部地層などの厚さを転記する際に写し間違えた。

②19年4月5日判明。シーム(比較的厚い層にはさまれている異質の薄い層)の走行を示すときに90度ずれた図を示した。

③21年6月11日判明。「地震」記載に対し、(1)根拠資料の参照箇所の誤り、(2)根拠資料の元データの確認漏れ、(3)根拠資料との照合不足、(4)数値の丸めに伴う表記ミス──があった。

④22年4月22日判明。一部新しく削孔したボーリングの位置に関して図に誤りがあった。

 只野弁護士らは3月1日に東京地裁(市原義孝裁判長)であった同差止訴訟の口頭弁論で、今回の入力ミスや過去のミスをふまえて次の準備書面を出した。

〈電源開発は、ずさんな作業により、きわめて初歩的な誤りを繰り返している。口先では『再発防止策を再度徹底・構築』するというものの、これは全く実現されていない。原子力発電所が有する甚大な危険性を考えれば、これらは単なるケアレスミスとして片付けてはならない〉

〈電源開発の能力不足は顕著であり、改善の見通しはまったく立っていない〉

 原告函館市の現担当者は今回のミスについて「率直な感想として、驚きました」と回答。電源開発の函館駐在所長代理が2月1日に説明に来たが、原子力規制委員会のサイトで公開されているよりも簡易な内容の資料だったという。

 繰り返される「過ち」により安全審査は遅れに遅れている。税金の無駄遣いだ。電源開発は原発から手を引くべきではないか。

(写真撮影/伊田浩之)

(『週刊金曜日』2023年3月10日号)

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