強まるトランスジェンダー女性への攻撃 「女湯に侵入」というデマ
本田雅和・編集部|2023年4月4日5:09AM
「原因は男女不平等社会」
つまり、性犯罪や性暴力、性的な迷惑行為はトランスジェンダーであろうがなかろうが許されないことで、「取り締まるべきは性犯罪であり、トランスジェンダーではない」のに、前出のデマ言説が「トランス嫌悪を煽る材料として使われている」と指摘。「トランスジェンダー女性と性犯罪防止は切り離すべきだ」という常識的議論に立ち返るよう訴えた。
一方、出生時に女性を割り当てられたが、今はトランスジェンダー男性として生きる杉山文野さんは「女性」と「男性」の非対称な関係を体験談として語った。「物心ついた頃から性自認は男性だったので20代から性別移行してきたが、見える景色の違いに愕然とした」という杉山さん。女子生徒として通学していた時代、多くの友人が電車内で痴漢の被害に遭ったが、大人たちから「ミニスカートが悪い」「抵抗しないからだ」など、女性側に問題があるような対応をされたこともあったという。
現在は「私にはトランスジェンダーというマイノリティ性はあるが、ジェンダーが男性というマジョリティ側になったことで暮らしやすくなった面もある」と話す。そして「トランスジェンダーヘイトと言われるもののほとんどがトランス女性に対するもの。トランスジェンダーを守る法律が議論になっても、男風呂や男性用トイレの安全が脅かされるなどという話題は出てこない。原因は男女不平等社会にある」と指摘。「トランスジェンダーで女性という二重のマイノリティの生きづらさは足し算ではなく掛け算。その属性を加害者のように言うことが、どれだけ暴力的なことか」と訴えた。
(『週刊金曜日』2023年3月31日号)