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リニア残土フォーラム開催の御嵩町がJR東海と裏会合

井澤宏明・ジャーナリスト|2023年3月29日7:00AM

最終回となる第6回フォーラム(3月21日)を前に引退表明した渡邊公夫町長。残土処分場問題は先送りされた。(撮影/井澤宏明)

 リニア中央新幹線工事で掘り出される「有害残土」の処分場建設問題に揺れる岐阜県御嵩町。受け入れの是非をめぐって町が昨年始めた「フォーラム」は、有識者を交え公開の場でJR東海と協議する新たな取り組みとして注目を集めてきた。ところがこのほど公開された文書により、町がフォーラムに備え、JR東海や有識者と一堂に会した打ち合わせを繰り返していたことが明らかになった。

 JR東海は町内で掘る2本のトンネルから出る残土(約90万立方メートル)を町内の山林に埋め立てる計画だ。このうち重金属を基準値以上含有する有害残土を含む約50万立方メートルを町有地に埋め立てる恒久処分場計画を2019年8月、町に打診した。

 当初、受け入れを拒む姿勢を示していた渡邊公夫町長は21年9月に町議会で一転「受け入れを前提として協議に入りたい」と表明。町民から不信の声が高まったためフォーラムの開催が決まった。

 今回、町議会の資料要求や町民の情報公開請求に応じて町が公開したのはフォーラムの「業務打合せ・記録簿」。昨年2月から今年1月までの計57回分だ。このうち最多となる18回で、町とJR東海、有識者、フォーラム運営を請け負ったコンサルタントが顔をそろえていた(オンラインを含む)。

 どんなことが話し合われていたのか。第1回フォーラム(昨年5月28日)の直後の6月8日には「フォーラムで参加者から『汚染』という言葉が相次いだ。『汚染』は自然由来の鉱物には使用しない。町やJR東海からは『汚染』という言葉を使用しないようにする」と記され、有害残土(同社は「対策土」と呼ぶ)の扱いを示し合わせていたことがうかがえる。

 このような「印象操作」に有識者は厳しい意見を投げかけていた。「地下で安定していた物質を地上に持ってくることにより、雨水にさらされるなど環境が変わる。そのことに住民は不安を感じるのではないか。問題は人間が手を加えることで、自然由来を主張しても安全は確認できない。ごまかしてはいけない」(9月20日)。

 同社が有害残土を封じ込めるとする「二重遮水シート」にもさまざまな懸念が示された。「二重でも一体だと一発で破れないか不安」(10月18日)、「理論上100年以上持つという話をしているが実績がない。実績が50年くらいしかない」(同20日)。だがフォーラムで町民に明かされたのは、これらの助言のほんの一部だけだった。

「住民の方もいろいろ調べており、JR東海はもっと資料を出した方が説得しやすい」「もっと細かい数字を出した方が、信頼も得やすい」(8月1日)と、有識者が同社を「指南」する場面もあった。

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