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赤ペン裁判官”に怒り心頭 東住吉冤罪国賠訴訟の控訴審判決

粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年2月28日7:00AM

判決後、加藤高志(左)、塩野隆史(右)の両弁護士とともに会見した青木惠子さん。(撮影/粟野仁雄)

 1995年に大阪市東住吉区で小学6年生の女児が焼死した火災で「娘に保険をかけて放火、焼死させた」として無期懲役が確定し、服役後に再審無罪となった母親の青木惠子さん(59歳)が、国や大阪府に損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が2月9日にあった。

 一審の大阪地裁は昨年3月に、警察(大阪府)の取り調べの違法性は認めたが、検察(国)の違法性は認めない判決を下していた。今回の控訴審判決で、大阪高裁の牧賢二裁判長は「原判決は相当である。一審原告による本件控訴及び一審被告大阪府による本件控訴は、理由がない」と、一審判決を踏襲して検察捜査の違法性を否定し、青木さんの訴えを棄却。大阪府による控訴も棄却した。

 判決言い渡しの法廷では、牧裁判長が主文だけ朗読し「理由はお読みください」と立ち上がるや、青木さんが原告側の席でドーン!と机を叩き「これからも国と手をつないでどんどん冤罪作ってくださいね」と怒りの声を上げた。

 判決文に対しても、青木さんは「何これ、これじゃ赤ペン先生やないの」と憤った。確かにそれは、濡れ衣を着せられ約20年も獄に囚われる辛酸を嘗めた冤罪被害者に対峙した裁判官としてはあまりに薄情だと思える代物だった。全体がわずか11ページで、内容的にもこれまでの訴訟の経緯のほかは、ほとんど一審の判決文の誤字脱字などを修正しただけ。しかもその当該の部分だけを引用して書いているため、具体的な内容については一審の判決文を横に並べて確認しなければ何ひとつわからない。削除や追加をした部分もあるが、その理由も書かれていない。

 原告弁護団の加藤高志弁護士も「あれでは評価のしようがない。一審の裁判長は丁寧に和解の道を探ってくれましたが、今回の裁判長は、われわれが提示した新たな見解に対してもまったく検討していない。具体的な判断は何ひとつなく、許せない」と話した。

 一審では青木さんが大阪地裁による和解勧告に応じたが、国と府がそれに応じなかったため控訴審に持ち込まれていた。青木さんは「牧裁判長は検察官に対する証人尋問もしてくれなかったし、私の話も何も聞いておらず、私も期待していなかった」と振り返る。

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