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2022年貧困ジャーナリズム大賞は毎日新聞「ヤングケアラー報道」

大和田太郎・ライター|2023年2月7日7:00AM

宇都宮健児代表理事から「大賞」に表彰された毎日新聞取材班の山田奈緒さん(右)。(撮影/大和田太郎)

 貧困問題に関する優れた報道に贈られる「貧困ジャーナリズム大賞2022」の授賞式が1月24日に東京・文京区で行なわれた。今回は毎日新聞取材班(松尾良、向畑泰司、田中裕之、山田奈緒の各氏)の「ヤングケアラーをめぐる新聞連載と本の出版活動」が「大賞」に選ばれた。「貧困ジャーナリズム賞」に永田豊隆さんの著書『妻はサバイバー』など9件、「特別賞」に川和田恵真監督の映画『マイスモールランド』など4件が表彰された。(受賞者一覧はこちらから)。

 貧困ジャーナリズム大賞は一般社団法人「反貧困ネットワーク」(宇都宮健児代表理事)が、貧困問題について正確で継続的な報道を行なったジャーナリストらを対象に、2007年から毎年贈ってきた。

 今回の「大賞」を受賞した毎日新聞取材班のヤングケアラー報道については「近年注目を集めている『若者による介護』の実態に、当事者への丹念な取材の積み重ねで迫っている」と高く評価。さらに「質的なアプローチだけでなく、ケアに関わる若者の量的な実態についても、既存の国の統計を生かしてつきとめようとするなど、多角的に現場に肉薄した。介護制度の貧困が若い世代への介護の重圧を生み出し、それが学業や将来設計にまで影響を及ぼして、次世代の貧困へと連鎖していく状況が描き出されている」と講評した。

 授賞式後に「若者と女性を食いつぶす社会に未来はあるのか」とのテーマで開かれたシンポジウムでは、出席した各受賞者が取材・報道を通じて感じたことや苦労した点などを語った。毎日新聞取材班の山田さんは「ヤングケアラーという言葉があまり浸透しておらず、その言葉によって救われる人もいれば傷つく人もいて、それをどうとらえるか、どう書くかで苦労した。取材しながら迷ったこと、『こう書いてよかったのだろうか』といった記者の思いを盛り込んで本として届けた」と振り返った。

「ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う」で貧困ジャーナリズム賞を受賞した週刊東洋経済取材班の風間直樹さんは「強制入院という形で閉鎖病棟に入院している方と接触できる機会は非常に限られている。今回端緒となったのは、精神医療問題を取り上げた著書を紹介した弊誌(『週刊東洋経済』)書評欄記事がオンライン媒体に転載され、これを強制入院させられている人の友人が偶然目にして、われわれに連絡してきたことだった。閉鎖病棟にいる人の貴重な声を深掘りしていった結果、常軌を逸した長期強制入院の現実などにたどりつき、一冊の本にまとめることができた」と話した。

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