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福井県の原発7基運転差止訴訟で滋賀県米原市長が証言

瓜生昌弘・福井原発訴訟〔滋賀〕を支える会事務局長|2023年1月5日7:00AM

期日終了後の記者会見・報告集会で話す滋賀県米原市の平尾道雄氏(左から2人目)。(撮影/瓜生昌弘)

 

 関西電力が福井県に設置している原発7基の運転差し止めを求めた裁判の第35回口頭弁論が12月1日、大津地裁(堀部亮一裁判長)で行なわれた。原告住民側が予定している5人の証人の二番手として、滋賀県米原市の現職市長である平尾道雄氏が証言台に立ち、避難計画をつくる側の行政の首長からみて、実効性のある避難計画をつくることは困難であると証言した。そして裁判所に対しては、避難計画の実効性とは住民を被曝させないで避難させることであり、計画の実効性を見極めて判断してほしいと訴えた。

 原告側主尋問に対して平尾氏は、実効性のある避難計画の策定が困難な理由として、UPZ(原発から5~30キロ圏内の緊急防護措置区域)圏外の同市は必要な予算や情報が不足していると述べた。そして事故時にまず行なうとされる「屋内退避」は、熊本地震で前震の後本震がきたことを考えると、大地震のときに本当に安全な建物があるのか、実際に屋内退避で被曝がおさえられるのか、が課題だとした。

 さらに平尾氏は、原子力災害と同時に発生する可能性が高い複合災害についても、①生じうるすべての事態を想定することは困難、②災害弱者への対応が難しい──と指摘した。

 原発そのものについては、原発回帰の風潮となっているが、40年から60年運転しただけで、10万年も管理が必要な原発を脱炭素ということで進めることには首をかしげるとして、人類の未来には再生可能エネルギーが重要であり、原子力に頼らない政策が必要だと強調した。

 休憩をはさんで、関電側反対尋問があった。主尋問に対する証言を打ち消すような内容はなく、県や他市町との情報共有の問題、実効ある避難計画とは何か、段階的避難の問題などについての質問が行なわれた。

 続いて裁判所からも質問があり、避難手段について車、バスが想定されているが、計画通りに台数を確保することは難しいなどのやり取りがあった。

 裁判終了後の記者会見・報告集会で、現職市長として原発問題について証言することの感想を聞かれた平尾氏は「住民の生命、財産を守ることが地方自治の本旨だ。その点から考えると、首長としてためらうことではないと考えている」と明快に回答した。

 次回期日の2023年3月9日は、放射性廃棄物問題で芝邦生氏に尋問を行なうことが正式に決まった。(裁判所に証拠提出している平尾市長の陳述書はこちら。http://www.nonukesshiga.jp/archive/h25-wa-696/p1)

(『週刊金曜日』2022年12月23日号)

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