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「勝訴しても夫は帰ってこない」 新潟市水道局の職員パワハラ自死裁判

牧内昇平・フリーランス記者|2022年12月19日2:01PM

 新潟市水道局に勤めていた男性(当時38歳)が自死したのは上司(係長)によるパワハラや、困難な業務を任されたのに必要な指導が受けられなかったことが理由だったとして、遺族が新潟市に損害賠償を求めていた裁判(本誌9月9日号で詳報)は11月24日に新潟地裁で判決が言い渡された。島村典男裁判長は水道局の注意義務違反を認め、遺族に約3500万円を賠償するよう市に命じた。

入廷する遺族側弁護士と支援者たち。(撮影/牧内昇平)

 男性は2007年5月、〈いじめが続く以上生きていけない〉などと書き残し、自死した。11年に「係長によるひどいいじめがあった」として公務災害が認められたが、水道局側は事後的に実施した内部調査によっていじめ・パワハラの事実を否定。遺族への損害賠償を拒んでいた。

 地裁判決は係長のパワハラについて「不法行為を認めるに足りる証拠はない」として事実と認めなかった。だが、係長には「同僚や部下に対して厳しい対応を行なう傾向、強い口調で発言する傾向があった」とも指摘。亡くなった男性は単独では難しい業務を任されており、その仕事を予定通り終わらせることができなかった男性が、「係長から叱責されることなどを恐れて精神的に追い詰められ、そのことが主たる要因で自殺を決意した」と認定した。その上で判決は係長について①業務の進捗状況を積極的に確認し、必要な指導を行なう機会を設ける ②部下への接し方を改善して職場内のコミュニケーションを活性化させ、上司に対して積極的に質問しやすい環境を構築する――といった注意義務を果たさなかったと判断した。

 一方、判決は亡くなった男性に対しても「中堅職員として自らの苦境を解消するための対応を十分に採らなかった」と指摘。賠償額については損害額から5割の過失相殺を行なうことが相当とした。

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