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「配偶者同意」なき中絶手術 元夫が医師訴えた控訴審判決は一審と同じく棄却

岩崎眞美子・ライター|2022年12月17日11:17AM


「自分の同意なく妻(当時)に中絶手術をした」旨で、沖縄県在住の男性が県内の医師に200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が12月5日、福岡高裁那覇支部であった。母体保護法14条では既婚女性が人工妊娠中絶手術を受ける場合には配偶者の同意を要件としていることから起こされた裁判だ。判決では医師の過失は認められないとした一審判決を支持。控訴を棄却した。男性側は最高裁への上告を検討している。

(作成/女性の人権を守る医師を支援する会)

 女性は2017年に沖縄県内の医院を受診し、中絶手術を希望。問診票には既婚とあったため、医院では手術には配偶者の同意が必要であることを説明したが、女性は妊娠した子が婚外子である(夫の子ではない)こと、「DVのような行為」もあり、現在離婚調停中であるため同意書にサインが得られないと訴えた。女性は2日後に術前検査のため同医院を再受診。カウンセリングの際に、「夫が生活費を入れてくれず、けんかばかりしていた」ため1カ月前に離婚をしたと告げた。これらの聴取結果が記録された診療録を確認した被告医師は、女性が配偶者と離婚しているとして同意書なしで人工妊娠中絶手術を行なった。

 争点となったのは、女性の説明のみを根拠に手術を行なった医師の過失の有無だ。男性側はDV行為を否定しており、離婚について女性の説明が変遷していることについて医師には確認義務があったと主張した。判決では、医師が離婚の有無を再度確認しなかったことは不適切であったとしながらも、生活費を入れない、DVのような行為があるため離婚調停中であるなど具体的な説明は一貫していることから、医師に「その真偽を確認すべき法的義務があったというには足りない」という一審判決を支持した。

 母体保護法14条1項の配偶者同意要件には例外規定がある。ひとつは暴行や脅迫によって妊娠した例、もうひとつは同条第2項の「配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったとき」だ。今回の例は婚姻状態が実質破綻していることから「その意思を表示できないとき」の条件にあたると判断された。

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