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馬毛島基地化計画を「容認」 西之表市長のリコール運動始まる

土岐直彦・ジャーナリスト|2022年11月20日7:00AM

 鹿児島県西之表市の無人島、馬毛島を米軍・自衛隊共同の一大軍事基地化する計画について事実上「容認」しつつも賛否を未だ明言しない八板俊輔市長の対応に、不信感を強める市民らが9日から、リコール(解職請求)への運動を始めた。前言を翻す不可解な言動と、防衛省に次々協力する八板市長の「公約違反の裏切り」「独断」に憤り、しびれを切らした格好だ。

 一方の防衛省は地元同意を得たとみて、年度内着工へ関連工事の契約を加速、地元の協力に対する米軍再編交付金の支給も決めた。矢継ぎ早の計画進展の背景に何があったのか。

リコール活動開始の記者会見をする「市長に辞任を求める西之表市民の会」。中央が三宅公人さん(提供/「市民の会」)

 

 リコールを進めるのは市民グループ「馬毛島情報局」主宰の三宅公人さん(70歳)ら。主体となる「市長に辞任を求める西之表市民の会」(代表は三宅さん)を立ち上げた。設立宣言では「八板市長の姿勢の変化を、ただ黙って見ていることはできません」「このままでは基地建設が防衛省主導で進行する」と、危機感を募らせている。

 八板市長は昨年1月の市長選で基地化反対を唱えて僅差で再選。基地に頼らない市政を明言した。その姿勢を豹変させたのは上京した今年2月3日。岸信夫防衛大臣(当時)との会談で基地化を見込んだ要望書を手渡し、地元に衝撃と混乱を生じさせた(本誌7月1日号既報)。

 3月下旬に前言を翻して防衛省による馬毛島の港湾浚渫工事を許可したのに続き、6月末には海底ケーブル敷設に賛成の意見書を提出。7月下旬、基地化を前提とした「市民の不安解消」の要望書を提出するに至る。9月初旬、これも前言を翻して馬毛島の小中学校跡地と隊員宿舎用の市有地(種子島)を国に売却、島の市道を廃止とする3議案を市議会に提案。本会議最終日に1票差で可決された。その2週間前の市民説明会では「学校跡地は売らない」「市道は廃止しない」と明言していたのに、だ。

 事態が急転したのは9月から。計画をめぐる国・市の9回目の協議が開かれた5日に国側は改めて跡地購入などを切望。協議直後に購入を正式申請すると市は関係会議を連日開き、9日には売却のための関連議案を提出した。間髪を入れず浜田靖一防衛大臣も13日の閣議後会見で交付金支給の手続きに入ったと表明。種子島1市2町(西之表、中種子、南種子)への今年度の交付金額は計10億6200万円。すり合わせによる「あうんの呼吸とも取れる両者の対応」(9月27日付『南日本新聞』)だ。

 遡る2日の市議会。所信表明で八板市長は、馬毛島基地計画について「現時点で同意・不同意が言える状況にはありません」と、事ここに至っても言を濁した。

会見時に有力代議士同席

 所信表明の中では、八板市長は計画に賛成反対を問わず「すべての市民に感謝」と述べ、続けて「地元選出国会議員ほか関係者の尽力」にも感謝の意を示した。「国会議員」とは、自民党鹿児島県連会長の森山裕衆議院議員のこと。八板市長が「豹変の会見」を開いた際、傍らにいた自民党実力者の一人(党選挙対策委員長)だ。7月22日、市長が防衛相に騒音対策などの要望をした際の会見にも、なぜか森山氏の姿が横にあった。

 森山氏は11月6日、鹿児島市での自民党県連の政治資金パーティで基地計画に言及、「(地域で)大きな分断を起こすことなく工事が始まる」(11月7日付・同前)。ここでも両者呼応しているかのようだ。

 リコール手続きは西之表市選挙管理委員会が証明書を交付後、1カ月以内に選挙人名簿登録者の3分の1以上の署名が集まれば署名簿審査などを経て住民投票の実施となる。投票で過半数が解職に賛成した場合、市長は失職する。

「西之表市民の会」では早速活動を開始。街頭で「八板市長は即時辞任を!」「米軍再編交付金はいりません!」と訴えている。他団体にも共闘を申し入れ、12月1日には署名活動を開始したい考え。

 三宅代表は「公約を守らず、前言を翻し、詭弁を弄して防衛省に積極的に協力する市長にはもう、うんざり」と厳しく批判している。

(『週刊金曜日』2022年11月18日号)

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