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「宗教2世」1131人が「チキラボ」の当事者調査に回答

岩本太郎・編集部|2022年11月15日7:00AM

 統一教会(世界平和統一家庭連合)問題では同教会も含めたさまざまな宗教の信者を親に持つ「宗教2世」の存在に関心が集まっている。メディアで報じられるその姿は実態を捉えているのか。そうした世間の関心への、一つの回答ともいうべき調査結果が11月1日に公表された。一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」(東京都中央区)による「『宗教2世』当事者の実態調査」(※)だ。

11月1日、記者会見で調査結果について説明する荻上チキさん。(撮影/岩本太郎)

 同団体代表理事の荻上チキさんが同日、東京・霞が関で開かれた記者会見でその概要を説明した。調査は9月9日から19日まで、ウェブ上のアンケートフォームを通じて行なわれ、回答者は総計1158人に。そのうち有効回答とされた1131件を対象に分析した結果が、今回発表された内容だ。

 ちなみに「宗教2世」といっても今回の有効回答者の範囲は「4世以上」まで及ぶ。また、当事者にリーチしてもらう「スノーボールサンプリング」による調査であり、この結果がそのまま偏りのない「一般的な宗教2世の代表的なサンプル」となるわけではない。会見の冒頭、荻上さんはこうした調査の難しさを挙げ、これがあくまで「政府が大規模な調査を行なうまでの暫定的な、民間による調査」だと報道関係者らに強調した。

 そのうえで、まず現在の「2世回答者(3世以降も含む)」が社会に求める対策を複数回答(以下同じ)で聞いた結果としては、親や教団から安全に離れられる制度の整備(73%)、社会問題を起こした団体への解散命令(71・90%)、カルト規制法整備(67・30%)が上位に挙がったことを報告。さらに、脱会者では家族との関係が悪化した(58・30%)、宗教的価値観が自身の中に残っていることに伴う生きづらさ(45・90%)、教団や家族からの再入団要求(35%)も目立ったという。「家族から求められたこと」に関する質問では、儀式等への出席(89・9%)、教団関連団体への所属等(39・5%)、教団への献金(34・2%)などの結果も得られた。

“宗教の残響”による困惑

 なお、調査では2世回答者の選択肢への自己申告を基にした分布状況として「仏教系611 神道系100 キリスト教系345」、団体別では「創価学会428 エホバの証人168 統一教会47」が上位を占めたとの数字も報告され、この3団体の2世信者についての比較も行なわれた。たとえばキリスト教系(統一教会やエホバの証人)では総じて性に対するタブー意識が強く、大人になっても恋愛・交友関係を制限された傾向が強く表れており、脱会時・脱会後の困難や価値観での困惑(宗教の残響)の度合いも高く見られた。エホバの証人では8割以上が家族からの体罰を経験しているほか、6割以上が学業・就業面での制限を経験。統一教会では「暮らしむき自己評価」が他に比べて両極化(高所得者が対象になりがち、あるいは献金で低所得となりがち?)していた。政治活動への関与要求度合いは創価学会で高く(なおかつ家族からよりも教団からの要求が高い)、男女別では全体的に女性のほうが男性よりも宗教儀式や献金・活動への参加要求度合いが高い(教団、家族双方からの要求にさらされやすい)といった知見も得られたという。

 これらの結果から荻上さんは、メディア等で報じられている「宗教2世」たちの声は「決して特殊なケースではなく、多くの2世が共有するもの」だと捉えるに至ったそうだ。ただ前述の通り統計的な妥当性のある結果ではないため「これが不十分であるなら、ぜひ国が実態調査をしてほしい」とも。この調査結果をもとに国会での議論が進んだり、メディアがこの問題をさらに深く報じてくれたりすることを期待しているという。

 他方で独自の提言として、問題のある宗教団体による虐待から子どもたちを守るための方策としての「子供コミッショナー」「子供シェルター」の設置、教育ネグレクトへの介入、宗教トラウマへの広範な保険適応、社会適応プログラムなどの支援パートの拡充が必須だと訴えた。

※調査結果は以下のURLより入手可能。
 https://www.sra-chiki-lab.com/reaserch-result/

(『週刊金曜日』2022年11月11日号)

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