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「秘密回収指令文書」公開訴訟
連載”日の丸ヤミ金”奨学金 第12回

三宅勝久・ジャーナリスト|2022年10月29日7:00AM

滲む利用者敵視の姿勢

 答弁書で被告は次の主張を展開している。

〈本件文書は、当該年度における法的処理(中略)を実施するにあたり、多数の延滞者の中から、奨学金の返還を求めるために支払督促手続を実施する対象者の範囲を具体的に特定する文書である〉

 黒塗り部分の具体的な記載内容は、「各年度における法的処理の実施計画を策定するにあたっての背景事情や対象者の大枠に関する考え方(方針)」と「上記方針に基づく具体的な法的処理の対象者の属性、類型、見込件数、実施時期」だという。

 そして、これらを非開示にした理由についてはこう述べている。

〈仮にこれらが公開された場合、本来、被告の「争訟」の相手方当事者になるべき者が、法的処理の対象となることを事前に知ることとなり、法的手続を回避するため、(訴状等の送達ができないように)一時的に身を隠すこと、資産を秘匿すること及び(法的処理の対象から外れる程度の返還を行う等)延滞状況を継続すること等の事態を招くことは容易に予想される。このような事態は、被告の債権回収の実効性を著しく低下させ、次世代の奨学金原資の確保に支障をきたすこととなり、奨学金貸与事業の健全性及び持続性を阻害する事態を招くこととなる〉

 支払督促や訴訟の方針を明らかにすると、逃げたり財産を隠す者が出てくる。支援機構の奨学金ローン事業に支障が出る、だから明らかにするわけにはいかないのだ――簡単に言えばそういうことらしい。

 利用者を敵視する考えが露骨に表れていることに筆者は驚きを覚える。それはともかく、条文の適用自体に疑問がある。「法的処理実施計画」に、具体的な契約や訴訟、交渉に関する内容が記載されていないことは明らかだ。大まかな方針を示しているにすぎない。独立行政法人等情報公開法5条4号ニに該当するとの説明で本当に正しいのだろうか。

 原告(筆者)はとりあえず、次の事項などについて釈明を求めることにした。

1 黒塗り部分の中に繰り上げ一括請求に関する記載はあるのか。

2 回収方針が事前に漏れたために、逃げたり、資産を隠すなどして、回収が困難になった実例はあるのか。

 市原義孝裁判長は、この求釈明を採用したうえで、答弁書への反論を原告に指示して閉廷した。次回の口頭弁論は10月28日午前10時50分から東京地裁703号法廷で開かれる予定だ。

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