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誰かを馬鹿にしたいという無数の人々の欲望 〈編集委員コラム 風速計〉雨宮 処凛

2022年10月28日7:00AM

 ひろゆき氏の辺野古を巡るツイッター(Twitter)が物議を醸している。

「新基地断念まで座り込み抗議3011日」と書かれた看板の横でピースサインする自身の写真とともに投稿された、「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」というツイート(Tweet)。

 大きな批判も起きているが、「いいね」をした人は28万人以上。一方、この騒動をきっかけに、「抗議運動のやり方が悪い」「もっと理解されるようにしろ」などの言葉も飛び交っている。

 一言で言って、うるさい。

 私自身も16年間、貧困や非正規の問題で声を上げ続ける中で、「もっとこうしろ」とか勝手なことを言われてきた。

 その中には、「自分こそが運動のやり方をわかっている」という武勇伝おじさん(学生運動とかやってた過去をやたら盛って話す面倒な人)もいれば、何もしてないのになぜか上から目線で口を出してくる人もいる。武勇伝おじさんは大抵「逮捕なんか恐れるな」など過激路線を無責任に煽る一方、マウント系は具体策は決して出さずにダメ出しばかりする。

 そんな時、心底思ったのは、「何もしないならほっといてくれよ」ということだ。

 知らない人から突然「お前のやり方は間違っている、だからダメなんだ」と言われて、「その通りですね、あなたのアドバイスに今すぐ従います」なんて言う人は皆無だろう。が、社会的な活動をやっていると、なぜかそんな返答を期待される。

 面倒なので、ある時期から、「口を出すなら金を出せ」と言うようになった。そうしたら面倒な人は消えたので、今度は「口出さないで金だけ出せ」と言うようになった。

 乱暴な言葉に聞こえるかもしれないが、どんな活動だって、お金がかかる。みんな身銭を切って時間を削って活動している。そんな人に口を出すくらいならまずカンパでもすればいい。

 ただ、これが通用しないこともわかっている。ひろゆき氏のツイートを受けて勝手なことを言っている人々は、沖縄への関心を高めているわけではないし、座り込みが行なわれる背景を学ぶわけでもないだろう。マウントをとって誰かを馬鹿にしたいという無数の人々の欲望があるだけだ。

 そんな形で沖縄が踏みにじられていることに、末期的なものを感じている。

(『週刊金曜日』2022年10月21日号)

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