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在日外国人への差別政策の根源を探る映画
『ワタシタチハニンゲンダ!』
8月19日から東京で1週間限定上映
髙賛侑監督に聞く

聞き手/渡部睦美(編集部)|2022年8月17日6:38PM

在日外国人に対する差別政策の根源はどこにあるのか。日本による朝鮮侵略・差別の歴史を直視することで、現在の入国管理政策、技能実習制度につながる差別政策の問題を浮き彫りにした映画『ワタシタチハニンゲンダ!』。タイトル自体が、すべての当事者からの訴えだ。東京で8月19日から1週間限定で上映される。

髙賛侑 (コウ・チャニュウ)/1947年、大阪府生まれ。在日韓国人2世。朝鮮大学校卒業。1988年、朝鮮関係月刊誌『ミレ(未来)』創刊、編集長。ノンフィクション作家を経て、2015年、ライフ映像ワーク設立、代表。19年、ドキュメンタリー映画『アイたちの学校』監督。著書に『ルポ 在日外国人』(集英社新書、10年)など。

      ©髙賛侑

『ワタシタチハニンゲンダ!』

監督 髙賛侑 ナレーション 水野晶子
撮影 髙賛侑、小山帥人、松林展也 テーマ音楽 Akasha
2022年/日本/114分
●8月19日(金)より1週間、東京のアップリンク吉祥寺で上映。全国でも順次公開中。

在日朝鮮人への差別が現在の外国人差別につながっている

――タイトルの「人間だ」という言葉を、私自身も取材でたくさん耳にしてきました。

 今回、取材の中で、難民申請者や仮放免者(収容を一時的に解かれた人)、技能実習生など、多くの当事者の生の声を聞くことができました。かれらの体験は想像を絶する。そんなかれらの多くから出てきた言葉が、同じ人間なのに、なぜこんなひどい扱いをするんだ!ということでした。

 そのときに、朝鮮戦争時、命からがら逃げてきた朝鮮人を日本が片端から捕まえて大村収容所(長崎県、現・大村入国管理センター)に収容し、ひどい扱いをして強制送還したという話をし、在日朝鮮人が日本で受けてきた差別の歴史について説明します。すると、自分たちも同じことをされているんだ、と問題のつながりをかれらは理解します。

 在日朝鮮人側もこれまで、問題をつなげて考えるという意識を持つ人が少なかった。日本の帝国主義時代に渡日を強いられた自分たちと、ほかの外国人とは違うという考えが根強い。でも僕は、在日朝鮮人が自分たちの権利を守るためにも、在日外国人全体の権利の獲得に尽力すべきだと考えています。在日外国人の大半は数が少なく、闘う術が乏しい。共闘しなければ。

――昨年廃案になった入管法改定案が秋の国会に出されることが懸念されています。

 それでものすごく焦っていています。このタイミングで映画の上映を広げていくために、5月から大阪を皮切りに関西で上映を始め、今後は、横浜、福岡、長野などでの上映も決まりました。自主上映も少しずつ広まっている。東京では8月にまず1週間上映されます。本当は11月だと2週間と言われたが、入管法改定案再提出のことを考えると、それでは遅い。入管法を絶対に改悪させてはいけない。

 先日、日本政府が見直しを表明した技能実習制度にしても、詐欺のような制度です。ブローカーが日本でお金を稼げるなど甘言で騙す、という問題よりも、そういうシステムを国家が作っているということが最大の問題。労働者としての権利を同等に認める新しい制度にしなければ。

 一方、外国人問題は他者の問題じゃない、ということを日本人自身も気付く必要がある。たとえば、人を使い捨てにする日本の労働者派遣法は、技能実習制度を実験場にして形成されたと私は考えています。どんどん業種が広げられ、制度の仕組みが似ている。差別は自分たちの身にも降りかかってくるということです。

(2022年8月19日号)

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