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長崎市性暴力裁判判決確定、市長が被害者に直接謝罪

西村仁美|2022年7月22日8:52PM

 長崎市で女性記者が2007年に同市の原爆被爆対策部長(当時/故人)から取材中に性暴力を受けたとして市を提訴し、今年5月30日に長崎地裁で勝訴した件(本誌6月10日・17日号などで既報)で7月13日、同市の田上富久市長らが東京都内で女性記者に直接面談のうえ謝罪した。

7月13日、東京都内で元原告(手前)に直接謝罪する田上富久・長崎市長。(撮影/西村仁美)

 田上市長は女性記者を前に、判決を受け入れるとする謝罪文を読み上げながら何度も頭を下げ「15年というあまりにも長い歳月にわたって貴職を苦しめ続け、記者として活躍する可能性を妨げた」と深く謝罪。本件を将来への重大な教訓としつつ性暴力根絶やハラスメント防止に尽力し、男女共同社会推進に取り組む意思を語った。その後、会場外での報道関係者による取材では謝罪まで長い歳月を要したことについて「(事件に関する)事実解明が非常に難しく見極めが困難だった」と説明した。

 女性記者は09年に日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済を申し立てた。14年には日弁連が市に謝罪と再発防止策を求める勧告を出したが、市が受け入れを拒んだことなどから提訴した経緯がある。面談後の会見で女性記者は「被害者が裁判を起こして最後まで行き着いたなら、この結果を受け止めるという態様を加害者側の組織が取るのではなく、その前にもう少しこちら側に歩み寄って欲しい」などと話したが、判決で求められていなかった謝罪を市長が決断し、面談の機会を設けたことは高く評価。弁護団との共同コメントでも、市との間で信頼の回復を基礎に「新しいステージにあゆみを進めたいと思います」とした。

 女性記者の元代理人の1人で、謝罪の場に同席した角田由紀子弁護士は「普通は性被害の裁判に被害者が勝っても謝罪はついてこない」と語り、今回のケースが性暴力事件における被害者救済を図るうえでの新しい道を切り開くのではないかとの期待感を述べた。

(西村仁美・ルポライター、2022年7月22日号)

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