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休刊の『根室新聞』の伝統受け継ぐ地方紙誕生 
「健全な民主主義に欠かせない情報共有ツール」

大野正美|2022年4月28日9:43PM

 本土最東端の北海道根室市で発行され、2021年3月31日に無期限の休刊に入った地方紙『根室新聞』。その伝統を継ぐ役割を果たす『ネムロニュース』紙が1年後に創刊された。自由民権運動の流れを受けて1889年に創刊された言論雑誌『北友』を、翌年に『根室新聞』と改題して発行を始めて以来の長い根室の新聞の歴史に、新たなページが刻まれた。

ネムロニュース社の社屋。旧『根室新聞』のものを引き継いだ。(撮影/大野正美)

 休刊した『根室新聞』は、1947年1月創刊の小ぶりなブランケット判4ページの夕刊紙。最終の通算2万2249号は「市政や北方領土問題、市民活動などを報じ、地方紙としての社会的使命の一端を果たしてきた」と振り返った。休刊の主な原因は、根室市の人口減や主産業の漁業衰退に伴う部数減と記者の人手不足という。

『ネムロニュース』は、全国各地で風力発電事業を展開する「CEF」(本社・根室市)が主体となって昨年10月に同市に設立されたネムロニュース社が発行する。同社の社長を兼ねるCEFの鎌田宏之社長(61歳)は、「異業種への挑戦だが、ローカル新聞は健全な民主主義に欠かせない情報の共有ツールだ。質の高い媒体へと育てていきたい」と抱負を語る。

『根室新聞』は根室市だけでの発行だったが、『ネムロニュース』は周辺6町との間で人とモノの交流が進むことに注目し、対象に加えた。通常の新聞サイズ、10ページの朝刊紙で、デジタル配信も行なう。

「根室の水産企業にホタテ加工工場竣工」といった地域情報を細かく追う一方、「とんがった主張」もする。ウクライナへのロシアの軍事侵攻に関連し「日本周辺の潜在的対立軸を考えた場合、圧倒的軍事力を誇るロシアと中国に対抗する防衛力は、費用的にも時間的にも簡単ではない」と書いた。

 少ない社員数でも編集作業はAIを駆使。印刷や配達も外注し、効率的な経営を目指すという新地方紙の実験が注目される。

(大野正美・『朝日新聞』根室支局長、2022年4月15日号)

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