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“日の丸ヤミ金”奨学金
若者から収奪する「日本学生支援機構」

三宅勝久|2022年4月7日6:31PM

【衆院文科委での応酬】

 3月2日、衆議院文部科学委員会で宮本岳志議員(共産)が繰り上げ一括請求問題に関する質問で「施行令歪曲疑惑」を取り上げた。答弁者は増子宏・文部科学省高等教育局長だ。

宮本 施行令5条5項ですね。「支払能力があるにもかかわらず」これが一つ。二つめ、「割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは」。(期限の利益喪失は)この二つの条件となっているわけです。(略)。しかしここ(返還開始時に配付する「返還のてびき」)には「督促しても返還しない場合は」という言葉はありますけれども、「支払能力があるにもかかわらず」という肝心の条件は書かれておりません。(略)返還が始まるまでの間に日本学生支援機構はこの施行令5条5項を明記した文書を、貸与を受ける奨学生に対して示しておりますか?


増子 奨学生に採用された際に配付しております「貸与奨学生のしおり」というものがございます。この103ページにおいて明示はしております。

3月2日の衆議院文科委で奨学金問題を質した宮本岳志議員(上)と、答弁した末松信介文科大臣。(衆議院インターネット審議中継より)

「明示はしております」という増子局長の答弁の意味が、続く宮本議員の質問で明らかになる。

宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと。

【「欺く趣旨ではない」】

 何のことはない。増子局長の言う「明示」とは「しおり」の中の資料のことだった。宮本議員はさらに、法的手続きの際に裁判所に対しても「支払能力」を説明していない点を指摘して、是正を要するのではないかと質す。

宮本 (支援機構が起こした債権回収訴訟の訴状においても)施行令5条5項が定める「支払能力があるにもかかわらず」、この文言がありません。まるで施行令が、支払能力の有無とは無関係に、割賦金の返還を著しく怠っただけで一括請求を許しているかのように説明しております。これは裁判所を欺こうということですか?

増子 決して、裁判所を欺くとかそういう趣旨ではございません。この第5条5項においては、返済者に支払能力があるにもかかわらず割賦金の返済を著しく怠ったと認めるときに、返済未済額の全部の返済義務を負うというふうに考えているところでございます。

宮本 支払能力があるかどうかはきわめて重大な条件なんですね。(略)少なくとも日本学生支援機構は、この施行令5条5項に明記された文章、すなわち「支払能力があるにもかかわらず」「割賦金の返還を著しく怠ったと認めるときは」という二つの条件をあらかじめ丁寧に貸与を受ける者に説明しなければならない。またその説明が不十分なまま法的措置に踏み込むのはあまりにも不誠実だと思います。大臣、是非とも改善、せめて検討を。

 答弁を求められた末松信介文科大臣は、こう答えた。

「わかりやすい通知文書となるように努めたい。やはりわかってもらうことが一番大事ですので、基本の『き』のところということでございますから、その点よく念頭におきます」

 一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない。(つづく)

(三宅勝久・ジャーナリスト、2022年3月25日号)

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