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東京五輪の謳い文句
「ジェンダー平等」は欺瞞

山秋真|2022年3月31日8:41PM

北京五輪開始間もない2月5日、特定非営利活動法人アジア女性資料センターと株式会社エトセトラブックスがオンラインイベント「スポーツとジェンダーと五輪」を共催。東京五輪が何をもたらしたかを振り返るとともに、スポーツとジェンダーに関する課題を考えようと、この問題に取り組む識者らが集った。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、女性差別発言で辞任した森喜朗会長の後任に橋本聖子五輪相(いずれも当時)を据え、問題は解決したかのごとく準備を再開した。家父長制的な権力を存続させるために「ジェンダー平等」を持ち出す五輪のあり方に「フェミニズムのあり方も問われた」と語るアジア女性資料センター代表理事・本山央子氏は、パンデミック下で東京五輪をやり、それが失敗に終わっても札幌での五輪開催を求める「日本の開発経済にジェンダーがどう組み込まれているか」と問題を提起。五輪開催時だけでなく、長期的に考えていく課題だと示唆した。

裾がレインボーカラーの衣装を着て「君が代」を歌うMISIA。東京五輪の開会式で。(提供/長田洋平・アフロスポーツ)

編集者の伊藤春奈氏は、社会で抑圧されている側の方が、している側より包括的に社会を理解できるという考えがフェミニズムにあると解説。「史上最もジェンダー平等の大会」と表向きにはまとめられた東京五輪を、フェミニスト視点で振り返ると、社会の諸問題が顕れると話した。

『〈体育会系女子〉のポリティクス 身体・ジェンダー・セクシュアリティ』(関西大学出版部)の著書がある井谷聡子関西大学准教授は、「民衆のスポーツへの熱狂、効率よく働く労働者の身体を作るツール、戦争でしっかり戦う兵士という3側面で、スポーツは権力に都合が良い」と指摘。「権力の思惑に乗っ取られず、自分の身体を自分のものに取り戻すかたちでスポーツを語りたい」と話した。また、東京五輪は多様性と調和をコンセプトにしながら、男性ホルモン値が高い女性選手の出場資格を制限する差別的な規定によって排除された選手がいたうえ、その規定は五輪後に撤回されており、ご都合主義的な女性の身体の扱いに「怒り心頭」という。

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