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老朽原発・美浜3号機運転差し止め仮処分
大阪地裁が争点整理に積極姿勢示す

2022年3月27日10:00AM

(大阪地裁前で入廷行進する申し立て人ら)

 

 3月7日、老朽美浜原発仮処分第3回審尋期日(非公開)が大阪地裁で開かれた。

 ウクライナへのロシアの侵攻、チェルノブイリ原発、ザポリージャ原発等の施設のロシア軍掌握が報じられるなか、期日前の前段集会では、福井県在住で申立人共同代表の石津優さんは「原発の抱える潜在的な危険が、自然災害や今回の戦争で表に出てくることになる。戦争になったら避難はあり得ないし、福井県若狭湾には敦賀から50キロもないところに15基もある。原発はあってはならない」と強く訴えた。

 期日後の記者会見を兼ねた報告集会にて、原子力規制委員会の地震動の基準改悪について、脱原発弁護団全国連絡会は「『ばらつき条項』を削除する基準地震動等審査ガイド改悪に反対し、強く抗議する」声明を発表した。2020年12月の大阪地裁判決は、地震動審査ガイド「ばらつき条項」を適用していないとして、関西電力大飯発電所3、4号機設置変更許可処分を取り消した。規制委の今回の改正案の中心は、この「ばらつき条項」を削除するものである。

 2017年12月13日広島高裁決定で、火山ガイドの不合理性を指摘されると、「巨大噴火に関する基本的な考え方」を出して火山ガイド自体を改悪した。今回も、裁判所から地震ガイドの不合理性を指摘されると、地震ガイド自体を改悪するという、規制のための組織として失格であり、まったく中立ではなく、3・11福島第一原発事故を招いた「規制の虜」は今も続いている。

 共同代表の河合弘之弁護士は、負けたからとルールを変えるさまは、たとえば、相撲で土俵そのものを変えることで許されないと断じた。このばらつき条項は本件の争点の一つでもある。

 声明の発表後、弁護団長の井戸謙一弁護士より、おおよそ以下の報告があった。

 ──申立人側としては、この日で審尋期日を終え、反論書面の提出期限を決めて、審理終結の方針であった。しかし、思いかけず、裁判所から、争点項目案(本件の争点について、裁判所がまとめたメモ)が提出された。当事者双方が落ちている争点がないかなど検討し、争点の確定後、争点ごとに裏付ける証拠をそれぞれ示すことになった。これは裁判所の姿勢としては正しいことで、これをしないと、争点だと思っていることを裁判所の決定で落とされてしまうことが往々にしてある。事前に主張整理することは非常に大事なので、裁判所がそういう姿勢を見せたことは評価したいし、かつ、主張レベルでなく、証拠まで整理してくれというのは、より積極的な姿勢なのである。

 今後、関電側と住民側の主張の補充を行なう。関電は、(1)今日の声明にもあった、地震動審査ガイドが改定されれば、主張補充したい、(2)もう一つは、住民側が関電の一番の弱点と考えている、震源近傍敷地問題である。

 すなわち、震源のすぐ近く原発の敷地は特別の考慮をすべきと規制基準にあるが、関電はそれをしていない。この点は名古屋の裁判(老朽高浜美浜原発設置変更許可処分取消訴訟)でも争点となっており、関電は国からの反論が出てきたら、この裁判でも主張したいと述べたが、いつ名古屋の裁判で国からの書面が出てくるのか、わからない。国の反論が遅れれば出せないことになる。関電自身の主張はこれ以上ないのである。──

 井戸弁護士は、この裁判の最も有力な争点はこの震源近傍の敷地問題であるが、もしこれで勝てば、規制委はまた規制基準を変えるかもしれないとコメントした。

 また大河陽子弁護士は、避難計画について、どのような事故を想定しているかという求釈明に対しては、関電は事故想定は把握していない、被ばく評価は行なっていない、それは、地方公共団体が想定するものだとして、事業者も協力項目が定められているが、事故想定を把握しないまま手伝うスタンスであり、反論したいと述べた。

 河合弘之弁護士は「裁判長は自分で書くことを決心している。再稼働する前に仮処分を出さないとだめという我々の意向はよくわかっている、けっこういいんじゃないという感触だ」と述べた。

 次回審尋期日は5月23日15時半、次々回は7月4日14時を予定している。

(脱原発弁護団全国連絡会)

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