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初の「原発バックフィット制度」めぐる判決 名古屋地裁、高浜原発停止認めず

中野宏典|2022年3月22日7:32PM

 関西電力高浜原発(福井県)の3・4号機について、火山噴火による影響が関西電力の当初の想定を上回ることが判明したのを受け、地元住民らが国を訴えた訴訟で、名古屋地裁(日置朋弘裁判長)は3月10日、原告の訴えを退け運転停止を認めない判決を下した。

3月10日、名古屋地裁前で判決後に結果を伝える原告ら。(提供/脱原発弁護団全国連絡会)

 この訴訟は福島第一原発事故の教訓として、原発の安全に関して電力会社に最新の知見を踏まえた対策を求めた「バックフィット制度」についての初めてのケースだ。同制度の立法趣旨を踏まえ、原子力規制委員会に対し、基準不適合な原発の停止命令を義務付けるか否かが争点になっていた。

 だが判決は義務付けの要件である「重大な損害を生じるおそれ」を認め、安全に欠ける現実的な可能性が高浜原発にあることを認めながら、使用停止を命じなかった規制委の判断に裁量の逸脱や濫用はないと判断した。また、自然災害について約2倍の過小評価があるとしても原則として使用停止を命じるべきとはいえず、噴火(約180キロ離れた鳥取県の大山)についても、その蓋然性などを原告側が立証すべきとした。

 しかし、今年1月のトンガ噴火の例でも明らかなように、噴火の蓋然性など立証不可能だ。また、この裁判では規制委が事業者に有利になる方針を秘密裏に決めていたことも問題とされたが、判決は規制委の更田豊志委員長が「事業者の原発訴訟等における敗訴リスクを考慮していなかったとは言い難い」と認定しつつ、裁量の逸脱・濫用はないとした。明らかな他事考慮にもかかわらず、これを無視した頑迷さには言葉を失う。

 規制委の裁量を広汎に認めて司法の職責を放棄し、基準に適合していなくても原発停止の必要はないとの悪しき前例を容認した恥ずべき判断というほかない。福島事故の教訓は名ばかりのものとなり、新たな安全神話が復活したことに強い危惧を感じずにいられない。

(中野宏典・弁護士、2022年3月18日号)

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