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名古屋入管死亡事件から1年 ウィシュマさん遺族が国賠訴訟

西中誠一郎|2022年3月22日7:13PM

 3月6日、法務省名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が亡くなってから、1年が経過した。

3月4日、提訴後の記者会見で話すウィシュマさんの妹ポールニマさん。(撮影/西中誠一郎)

 それに先立つ4日、ウィシュマさんの遺族3人(母と妹2人)が国を相手取り、ウィシュマさんを約6カ月半にわたり収容し続け、必要な医療措置を講じずに死亡させたことは違法だとする国家賠償請求訴訟を名古屋地方裁判所に提起した。国に約1億5600万円の損害賠償を求めている。

 昨年5月にスリランカから来日し、ウィシュマさん死亡の真相究明と入管による人権侵害の再発防止を求め続けてきた妹で原告の一人、ポールニマ・ラトヤナケさんはメディアにこう語った。

「1年が経ったが、真相究明できないので提訴した。弁護団と一緒に、姉がなぜ死んでしまったのかはっきりさせたい。法務省入管庁(出入国在留管理庁)と日本政府は責任逃れをしている。とても不安で、長い時間でした」

 ポールニマさんは来日後、上川陽子法務大臣(当時)や佐々木聖子入管庁長官と面会し、岸田文雄首相にも手紙を送った。しかし入管庁の内部調査は真相究明から程遠い。岸田首相は今年1月20日、参議院本会議でウィシュマさんを撮影した名古屋入管のビデオ記録を「閲覧していない」と答弁し、手紙への返事もしていないとした。ビデオは2週間分、計296時間ある。ポールニマさんは裁判所に弁護団と何回も通い、今回の提訴の証拠保全手続きとして一部を視聴した。また、昨年12月には衆参法務委員会に所属する国会議員有志が、約6時間半分を閲覧した。

 今年3月に入り、衆議院法務委員会では、入管庁が昨年8月に公表した「調査報告書」の内容と、開示されたビデオ内容とに齟齬があることが議論されており、独立した第三者委員会による再調査の必要性などの質疑も始まった。

「報告書」が示した改善策に基づき、入管庁の「有識者会議」が、今年2月末に「入管収容施設における医療体制の強化に関する提言」をまとめた。提訴後の記者会見で、弁護団の指宿昭一弁護士は「医療体制の不備でウィシュマさんは亡くなったのではない。血液検査で飢餓状態を示す数値が出たのに、入管が意図的に医療放置したから。このことが『提言』ではまったく明らかにされていない」と語気を強めた。

 会見には、ウィシュマさんの母と、先に帰国した妹のワヨミさんもスリランカからリモート参加。母のデヴァ・スリヤタラさんは「毎日ウィシュマのことを思い出してとても辛い。1年経ったが、心身ともに健康状態が悪化している」と涙声で訴えた。

【全国各地で追悼行動】

 6日昼には「ウィシュマさん一周忌全国一斉行動」が東京や名古屋、仙台など各地で行なわれ、計600人以上が参加した(主催者発表)。東京では、東京出入国在留管理局周辺を約300人が練り歩いて長期収容をやめるよう訴え、現在も収容されている人たちが窓から手を振ってそれに応えた。その後の集会では、ウィシュマさんを死に追いやった根本の原因は入管庁の体質にあるとして、その抜本改革を求める声などが上がった。名古屋駅前には約60人が集まり、ビデオ開示と真相究明、今も人権侵害や健康被害が続く全国の入管の状況などを訴えた。

 ウィシュマさんが亡くなった時刻の午後3時過ぎには、遺骨が安置されている愛知県愛西市の明通寺で一周忌の法要が行なわれ、ポールニマさんはじめ、ウィシュマさんを偲ぶ多くの市民が参列した。

(西中誠一郎・ジャーナリスト、渡部睦美・編集部、2022年3月18日号)

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