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否決された東京・武蔵野市の住民投票条例案
批判・反対論に確かな根拠はあるのか

2021年12月27日1:01PM

12月13日の武蔵野市議会総務委員会では僅差で可決されたが、本会議で否決された。(撮影/佐藤和雄)

 自民党国会議員の保守系グループらが強く反対し、全国的な注目を集めていた東京都武蔵野市の住民投票条例案は2021年12月21日、市議会本会議で否決された。常設型の住民投票条例で、日本国籍と外国国籍の住民で投票資格要件に差をつけない条例が成立すれば全国の自治体で3例目だった。しかし、今回は自民党国会議員だけでなく、大手メディアでは『読売新聞』『産経新聞』が「(外国人に)広い意味で参政権を認めることになりかねない」などと批判的報道を続けた。

 批判や反対意見が事実を踏まえたものかどうか。まずは武蔵野市住民投票条例案の内容を確認しておきたい。重要な点は四つある。

 第一は、住民投票が対象とするテーマ。なんでもかんでも、住民投票の対象になるわけではない。条例案は、自治体の合併に関しては「必ず住民投票を実施する」と規定。それ以外で「武蔵野市と市民全体に影響を及ぼす事項で、住民に直接その意思を確認する必要があると認められる」案件が対象となる。一方、「武蔵野市の権限に属さない事項」、つまり国政のテーマなどは「住民全体の意思として明確に表明しようとする場合」に限って認められる。

 第二が、激しい論争を呼んでいる投票資格者について。条例案は、住民投票で投票権を持つのは「満18歳以上の日本国籍を有する者または定住外国人で、かつ3カ月以上武蔵野市の住民基本台帳に記録されている者」と規定する。武蔵野市は「多様性を認め合う支え合いのまちづくり」を目標に掲げており、その考えが日本国籍と外国籍で差を設けない投票資格にも反映されている。

 第三は、住民投票を実施するために必要な署名数。地方自治法では有権者の2%の署名を集めれば自治体に住民投票条例の制定を求めることができる。ただ、議会の議決がなければ実施されない。武蔵野市によれば、請求しても約9割が実施されていないという。一方、今回の条例案は、投票資格者の4分の1以上の署名数があれば必ず実施される。武蔵野市では2カ月で約3万2000筆以上の署名を集めなければ、住民投票には至らない。市内に在住する外国籍住民は21年1月時点で約3200人。外国籍住民だけで住民投票を実現するのは不可能な数字だ。

 第四は、住民投票の成立要件と結果の反映について。住民投票が実施されたとしても、投票率が50%を超えなければ成立しない規定となっている。今年10月3日の武蔵野市長選は衆議院選挙の前哨戦とも位置付けられ、3候補による激しい選挙戦が繰り広げられたが、投票率は47・46%(前回は44・26%)。それを思えば投票率50%のハードルは低くない。

【市政が牛耳られる?】

 また、住民投票の結果については、市長と市議会は「尊重する」と規定されており、法的拘束力はもたない。もちろん市長と市議会の判断への影響は大きいだろうし、そうでなければ住民投票をやる意味はない。それでも制度的には市長と市議会が改めて判断する余地を残しているという点が重要なのだ。

 12月13日の市議会総務委員会では、自民党の佐藤正久参議院議員が「これはダメ。中国からすれば格好の的。やろうと思えば、15万人の武蔵野市の過半数の8万人の中国人を日本国内から転居させる事も可能。行政や議会も選挙で牛耳られる」とツイッターで述べた問題も取り上げられた。

「現実にそんなことはありうるのか」との質問に対し、担当部長は、人口密度が高い武蔵野市で数万人規模の特定集団が移住する可能性は「極めて低い」と答弁。さらに条例案で定められている実施や成立の要件などを説明したうえで、「特定の集団に市政が牛耳られることは起こり得ない」ときっぱり否定したのだった。

(佐藤和雄・編集部、2021年12月17日号の記事を一部修正)

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