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自民党のネット工作 
「Dappi」の闇を津田大介氏が解剖する

2021年11月12日8:30PM

津田 大介(つだ だいすけ)・1973年、東京都生まれ。早稲田大学在学中からライター活動。卒業後、99年に、編集プロダクション・ネオローグ設立。2007年、インターネット先進ユーザーの会(現・インターネットユーザー協会)設立、発起人。あいちトリエンナーレ2019芸術監督。20年6月、オンライン報道番組「ポリタスTV」を放送開始した。(撮影/本田雅和)

リアルな画像や動画をウソ情報で巧みに加工し、野党やリベラルなメディアを中傷し続けるインターネット上のツイッターアカウントと、自民党との深い関係が急浮上している。「Dappi」と名乗り、中立的な「ニュース素材」提供者のように見せかけてはいるが、この発信事業の企画発案者は誰で、資金や情報はどこから来るのか? Dappi問題の本質とは何なのか? 現在の政治状況の中で何を意味するのか? ネットメディアや言論問題に詳しいジャーナリストの津田大介さんに聞いた。

 これは普通の匿名のネット保守のアカウントとは違う。プロの仕事です。ツイッターの投稿ですが、スマホでやっているか、パソコン(PC)でやっているかを見るとすべてPCから投稿。凝った動画だったら編集を加えていたり、一般人が入手しにくい資料を提示したりしている。ネトウヨと一緒くたにすべきではない。ネット保守の人々が左派リベラルを攻撃するための材料=ソースを提供するアカウントなのです。

――そのソースがフェイクなわけですね。

 厄介なのは、その材料は半分が本当で、残り半分を切り取ったり、文脈を変えたりすることです。これは2016年の米大統領選でも見られたフェイクニュースの手法で、最初から丸ごとデマを出しても拡散しない、半分ぐらいウソを混ぜてミスリーディングする情報が一番拡散するんです。そうすると手間も楽だし、コスパもいい。

 人は自分が確認できる程度のホンモノの情報が入っていると、歪められた部分への思考が働かないという現象が起きる。

――Dappiのフォロワーは約17万と言われています。

 保守系の作家などでもっとフォロワーが多い人はたくさんいて、それに比べれば影響力は少ない、という人もいますが、それは一面的な見方です。Dappiの最大の特徴は「ソース」を提供することで価値中立的に見せること。右派左派の垣根を超えてフォロワーが広がり、時にプロのジャーナリストやリベラル派知識人までがリツイートしたりフェイスブックで引用したりするようになってきた。直接的には17万人といっても、著名人がリツイートしたらその何倍もの効果があるのです。

――そこが政権政党の自民党の宣伝工作を担っているとしたら大きな問題ですね。なぜ大手メディアはもっと警告的に報道しないのでしょうか?

 自民党からDappiの運営会社であるO社への直接的なカネの流れは大した額ではない。小渕優子氏の政治資金管理団体からの入金などもウェブサイトの製作費など、判明しているいわゆる「表の仕事」については安い額です。

 だから、これもシステム収納センターという別の会社をかませることによって、自民党からのカネの流れが見えにくくなるということがポイントです。たとえば間にもっと何社もかませていたり、一般的な広告代理店が入っていたりしたら、カネの流れはもっと分かりづらくなってくるでしょう。

【待たれる内部告発や証拠文書の暴露】

 今回は自民党から同センターへ、数年で億単位のカネの流れが指摘されていますが、問題は同社経由で「業務」として自民党の世論工作が請け負われていたか、公職選挙法違反にあたるような行為をしていたかどうかで、かなりの部分がまだグレーゾーンなのです。

 ここをクリアして業務としてやってきたということを確定的に報じるには、内部告発か、契約書や指示書の暴露が必要です。どうしても煮え切らないままの「疑惑」報道になる。

 実はさらに高いハードルがあります。もし、こうした世論工作に、首相の“つかみ金”と言われる領収書不要の「政策推進費」名目で、「内閣官房機密費」が使われていたらファクトの確認や立証はさらに困難になる。

※「Dappi」問題に関する津田大介さんのインタビュー全文は、2021年11月12日発売の『週刊金曜日』11月12日号に掲載される。

(聞き手・まとめ/本田雅和・編集部、2021年11月12日号より抜粋)

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