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安倍傀儡の岸田内閣から政権交代を実現するには

中島岳志|2021年10月28日3:22PM

【表1】

価値観の問題については明言を避けることが多いが、歴史認識についてタカ派的言動は顕著ではなく、宏池会のリベラルなあり方を踏襲する姿勢を示している。政治家のマッピング(表1)では、セーフティネットを強化する「リスクの社会化」と多様性を容認する「リベラル」の組み合わせ(Ⅱ)に位置づけることができる。

 

 

【岸田新総裁は自らのヴィジョン封印か】

しかし、問題は岸田新総裁が、総裁選で安倍晋三元首相のサポートを受け当選したことで、その影響を強く受ける体制になっているということだ。党役員人事では、安倍元首相と昵懇の甘利明氏を幹事長に据え、高市早苗氏を政調会長に起用した。

安倍元首相の政治理念は、岸田新総裁とは真逆のⅣである。自己責任論に基づく「リスクの個人化」を志向し、価値観の問題では「パターナル」な姿勢が顕著だった。彼は日本型ネオコンというべき政治家である。

Ⅱの新総裁が、Ⅳの元首相の意向を受けて発足した内閣。それが岸田内閣である。岸田新総裁が、自らの示したヴィジョンを貫けるとは到底思えない。かつて海部俊樹内閣(1989~91年)が竹下登・金丸信両氏の支配下にあり、重要法案についても竹下・金丸両氏の判断を仰いでいたことが知られているが、岸田内閣はこの海部内閣に類似している。安倍傀儡政権と言って差し支えないだろう。

今回の総裁選を通じ、自民党には多様な人材がおり、党内の幅の広さが示されたという見方が出ている。確かに岸田新総裁は安倍・菅義偉路線とは反対のヴィジョンを示し、野田聖子氏はその傾向がより鮮明だった。

しかし、このことをもって自民党の多様性を論じることはできない。岸田・野田両氏は、同じ93年の衆議院選挙で初当選した同期議員である。93年当時、自民党は宮澤喜一内閣で、宏池会に代表されるリベラル勢力が保守本流とされた時代である。この頃に当選した議員たちが、約30年間の議員生活で経験を積み、首相候補者に名を連ねている。ちなみに93年初当選組には、安倍元首相も含まれる。93年衆議院選挙は最後の中選挙区制でたたかわれた選挙であり、自民党も複数の派閥が均衡する中、多様な人材を輩出する体制が採られていた。しかし、96年から小選挙区比例代表並立制が導入され、総裁や党幹事長に党内権力が集約されるようになると、人材の多様性や闊達な議論は失われていき、党幹部への上目遣いが顕著になっていった。

安倍元首相が自民党総裁に返り咲いたのは2012年9月。そこから総裁を辞任する20年までに、3回の衆議院選挙が行なわれた。現在の自民党は衆議院議員の約4割が、3回生以下という構成だ。つまり、この世代の議員は安倍総裁の下で立候補した経緯があり、安倍長期政権の中で上目遣いや忖度を内面化していった人たちである。この世代にはⅣの傾向が強く、この傾向は安倍傀儡政権が続く中、さらに拡大するだろう。

この世代の議員たちの中から、今後10年で大臣が誕生し、首相候補者が見いだされていく。そして、かつての保守本流に属する議員たちがリタイアしていき、中選挙区制で当選した議員がいなくなっていく。自民党がⅣの政党という性質を強化していくことは間違いない。

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