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歴史教科書から消える「従軍慰安婦」「強制連行」 
菅政権による政治介入に批判の声

佐藤和雄|2021年10月5日1:05PM

文部科学省は9月8日、日本軍「慰安婦」や戦時労働の「強制連行」の記述について、教科書会社5社から中学社会、高校地理歴史など29点の訂正申請を承認したと明らかにした。これらの教科書の多くから「いわゆる従軍慰安婦」という用語が削除されたり、「慰安婦」に代えられたりし、「強制連行」は「強制的な動員」や「配置」という言葉に代えられた。

市民団体「子どもと教科書全国ネット21」は9月17日、鈴木敏夫事務局長らが記者会見をし、「ある歴史用語を、歴史研究とか教育的な配慮抜きに政府が問題にするのは前代未聞の出来事。学問研究や出版の自由を踏みにじる」と批判した。

なぜ、このようなことが起きたのか。

直接の発端は、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の二つの質問主意書に対して菅義偉内閣が4月27日に閣議決定した答弁書から始まっている。菅内閣は日本軍「慰安婦」については「『従軍慰安婦』は誤解を招くおそれがあるから(中略)単に『慰安婦』という用語を用いることが適切である」。「強制連行」については「『強制連行』又は『連行』ではなく『徴用』を用いることが適切である」という答弁書をそれぞれ閣議決定したのだ。

「従軍慰安婦」について少しだけ解説すれば、この閣議決定の狙いを萩生田光一文部科学大臣は5月12日の衆議院文部科学委員会でこう述べている。
「今回の閣議決定によって、強制性のある慰安婦等については今後その記述がなくなっていくんだろうというふうに期待をしていますし、そうであるべきだと思う」

つまり「慰安婦の存在は認めるが、強制的に動員・連行された女性たちではない」という認識を社会に広げるための閣議決定だ。

教科書への反映を可能にしたのは2014年1月の「政府の統一的見解また
は最高裁の判例がある場合はそれらに基づいた記述にする」という教科書検定基準の改悪だ。安倍晋三政権が政治介入を可能とする仕組みを整え、菅政権によって実行されたのである。

菅政権は10月4日に終わる。この政権の所業はさまざまに記憶されるだろうが、「教科書の歴史記述に露骨に政治介入した政権」であることを忘れてはならない。

(佐藤和雄・編集部、2021年10月1日号)

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