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JR東海「リニア工事の安全」強調も周辺住民の不信感は募る

井澤宏明|2021年7月2日5:36PM

住民説明会の会場前でメディアの取材を受ける三木一彦さん(右)。(撮影/井澤宏明)

リニア中央新幹線の大深度地下トンネル着工に向けてJR東海は6月8日、東京都品川区で住民説明会を開いた。調布市で昨年10月に起きた高速道路「東京外かく環状道路」(外環道)の陥没事故についての報告書が出たのを受けたもので、「第一首都圏トンネル」(品川駅―神奈川県駅)が通過する都内3区の住民が対象。報道陣には非公開で行なわれた。

リニアと外環道に共通するのは「大深度地下使用法」による国の認可を受け、地権者との用地交渉や補償をしなくても工事を進められる40メートル以深を使う点だ。外環道事故では地盤を補修するために家屋を壊して更地にする「仮移転」を住民が迫られている。「大深度地下は通常は補償すべき損失が発生しない」(国土交通省)とする法律の前提は崩れてしまった。

参加者によると、説明会ではJR東海側の説明に対して多くの住民から不安の声が寄せられたという。担当者は外環道事故の原因について有識者委員会の報告書通り「特殊な地盤条件となる区間」における「施工に課題があった」と説明。一方で「リニアには事故が発生した『特殊な地盤』に当てはまる場所はないと考えている」と違いを強調し、「『施工管理』をより強化する」と対策を示した。

これに対し、追加のボーリング調査を求める声が住民から上がったが、中央新幹線建設部の吉岡直行担当部長は「『外環さん』と違ってきちんと地質が把握できている」として追加調査を否定した。

終了後、JR東海はマスコミを集め「住民の理解を得られた」と説明したという。だが会場での録音を聞くと「トンネルが真下を通り、家が傾くのではないかと心配」「外環道では低周波音が発生し眠れなかったと聞く。夜間工事はやめてほしい」など、説明に理解を示す発言はゼロ。大田区の三木一彦さん(63歳)は「特殊な地盤じゃない、安全だとなぜ断言できるのか」と不信感を募らせていた。

(井澤宏明・ジャーナリスト、2021年6月25日号)

 

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