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沖縄でコロナ感染拡大「全国最悪」に 
苦悩深まる行政と県民

篠原知恵|2021年6月8日12:14PM

沖縄県の新型コロナウイルス感染拡大に歯止めが掛からない。県の5月24日の発表では直近1週間の人口10万人当たり新規陽性者数は83・77人で、全国最悪だ。離島の医療提供体制は脆弱で、新型コロナ病床・非コロナ病床とも占有率が8~9割超で常態化。医療の逼迫が深刻化している。感染力が強い変異株「N501Y」の割合も7割を超え「未経験の感染拡大」(県)のさなかにある。

5月の大型連休前までは、4月12日に始まった国のまん延防止等重点措置の効果がみられ、県内の新規陽性者は減少傾向だった。だが連休を挟み、若者を中心に急速に感染が拡大した。

連休前後には県の推計で約10万人が沖縄に来県した。変異株の流入が加速して感染が広がる事態を見越し、連休前の緊急事態の宣言を提言する医療の専門家も複数いた。重点措置が適用されている他県同様、飲食店などに酒類の終日提供自粛を求める一手もあった。ただいずれも観光立県の沖縄にとり、経済的に「大きな痛み」(県)を伴う判断だった。

結果的に県は連休前の強い措置に踏み切れず、県内では県の判断に対する不満も渦巻いた。謝花喜一郎副知事は「連休は稼ぎ時。ベストでないがベターな判断」、玉城デニー知事は「反省する。不徳の致すところ」と述べた。

一方で人の移動という都道府県をまたぐ問題は、沖縄1県だけで背負うのには大きすぎる。自民党の細田博之元官房長官からは「国の政策に頼るなんて沖縄県民らしくない」との問題発言があった。政府と県は辺野古問題で対立が続くが、単独でコロナに対応する都道府県などない。水際対策を置き去りにした国の責任も問われる。

政府は5月23日から6月20日まで沖縄に緊急事態宣言の適用を決めた。感染収束の見通しは立たず、出口戦略は描けぬままだ。医療だけでなく、観光業・飲食業を中心に県民の生活の苦しさも極限に達している。

(篠原知恵・『沖縄タイムス』記者、2021年5月28日号)

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