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生活保護費の減額処分を取り消した大阪地裁判決の意義

宇都宮健児|2021年5月1日4:21PM

今回の大阪地裁の判決は、前述の通り厚労大臣の判断には裁量権の範囲の逸脱または乱用があり、違法であると判断している。そのなかで、生活扶助基準額の引き下げに08~11年の物価下落率を反映させた「デフレ調整」に関し二つの問題点を指摘した。

一つは、国が物価下落の起点を2008年とした点である。08年は世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受け、11年ぶりに消費者物価指数が1%超上昇した特異な年であるとして、この年を起点として物価の下落率に反映させたことは、客観的数値などとの合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くと指摘している。

もう一つは、デフレ調整は厚労省が独自に算定した物価指数で物価の変化率を算定しており、総務省統計局の消費者物価指数がマイナス2・35%であるところ、変化率をマイナス4・78%として生活扶助基準額を改定している点である。

厚労省の物価指数では、生活保護利用世帯の支出が一般世帯より低いテレビやパソコンなど家電の物価下落率が大きく反映される指数となっている。このような物価指数を基に改定率を設定したことは、一点目と同様に、統計などの客観的な数値などとの合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くと指摘している。今回の大阪地裁判決は、同種訴訟を闘っている全国の原告団、原告弁護団に大きな励ましと勇気を与えるものである。

(宇都宮健児・弁護士。2021年3月5日号)※大型連休にあわせて過去記事を掲載します。

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