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「入管法改正案」は廃案に!──まずは死亡事件解明のためのビデオ開示を

階猛×中島岳志|2021年4月28日5:41PM

法案を議論する土壌すらない

4月27日、ウィシュマさんの遺族(左の映像)にオンラインで聞き取りをする立憲民主党議員や弁護士ら。前列の左端は階猛さん。東京・永田町の衆議院第一議員会館にて。

 気になったのは、自民党の井野俊郎議員が、今回の法務委員会の中で、自身が安倍政権時に法務大臣政務官であった時の話をしていたことです。ある難民申請者について難民認定をすべきだとの書類が現場から上がってきたけれども、客観的な事実が欠落していると考え、井野さんは許可しないとの判断をしたが、最終的には大臣が許可をして難民認定されたという事例についての話でした。

日本の難民認定の審査は非常に不透明であると聞きますが、井野さんの話で、そんなに自由裁量で結論が黒から白に変わったりするものなのかと驚愕しました。現在の制度にもこのようなさまざまな問題点があり、法改正の議論をする土壌すらできていません。

中島 今回の法案は議論以前の問題である、という立場に賛成です。ウィシュマさんのような深刻な問題が起きていて、それを隠蔽する中でさらにさまざまな問題が起きている。そこをまずは議論して、クリアにしていかなくてはいけない。

 われわれは、この法案について、衆議院での廃案を目指します。

中島 はい、廃案にした上で、2月に野党が出した「難民等保護法案」などを土台に、どう改善していくかという議論していくのがよいと思います。野党案では、法務省から独立した難民保護のための委員会を設置し、収容上限を設けて、収容の可否を裁判所が判断するという仕組みなどを提案しています。テクニカルな部分はそういう方向がいいと思います。ただ、やはり根本的には、移民・難民、在留外国人に対する国の受け入れの態度が問われている。

 1年前、検察庁法が改悪されそうになりましたが、世論の力で廃案になって、今回その部分が改められた形で法案が再提出され、可決されました。国会の中では野党少数であっても、世論の力があれば、与党を上回ることができるということ。入管法の改悪を止めるために、世論の力をもう一回見せる時がきていると思います。

ウィシュマさんの死について、現在さまざまな隠蔽が明らかになっていますが、ウィシュマさんが単独室に移されて、その様子が監視カメラで映されていたこともわかっています。このビデオ映像の開示もわれわれは求めています。14年に茨城県牛久市にある東日本入国管理センターで亡くなったカメルーン国籍の男性を映した監視カメラのビデオが、裁判を経て今年3月に一般公開され(https://www.youtube.com/watch?v=0gDlZuKO8ec)、そのビデオを先日みました。「I’m dying(死にそうだ)」と男性は何度も苦しみながら訴えていますが、放置され、その約12時間後に死亡したといいます。見殺しにされた。

ウィシュマさんについても入管の落ち度が大きいと思います。それを明らかにしていくためにも、ビデオの開示も強く求めていきたい。遺族も開示を望んでいます。ウィシュマさんの死の解明と、虚偽による中間報告の撤回、早急な最終報告の提出がまずは必要で、それがないままでは法案審議には応じられない。現在のような体質をもつ入管庁のもとでの法改正にも反対で、廃案を目指します。

まとめ・写真撮影/渡部睦美(編集部)

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