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ジェンダーギャップ指数2021
日本は156カ国中120位

宮本有紀|2021年4月12日2:13PM

世界経済フォーラムが3月31日、各国における男女格差を示す報告書「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(GGGI)2021年版」を発表した。

日本は総合が156カ国中120位で、前年の153カ国中121位とほぼ変わらないが、評価分野別に見れば政治、経済、教育、健康のすべてで順位を落としている(表参照)。当然、今回もG7(主要7カ国)では最下位で、トップのドイツ11位はもちろん、6番目のイタリア63位にも遠く及ばない。上位には例年通り北欧諸国が並ぶが、閣僚の42%が女性となったニュージーランドが前年より2位上昇して4位に入った。アジアで最も順位が高いのは17位のフィリピン。最下位はアフガニスタンで、155位イエメン、154位イラク、153位パキスタンと、中東近辺の国が続く。ただアラブ首長国連邦は72位で日本よりも上だ。

米国はバイデン政権で女性閣僚が増えたことなどで23位も順位を上げ30位になった。一方、日本は政治分野の順位が147位と最低レベル。「政治が足を引っ張っている」と指摘するのはパリテ(男女同数)議会実現のため提言を続ける三浦まり上智大学教授。「閣僚は首相や大統領が任命するので、本来、トップが決断すれば政治分野は躍進させやすいもの。今回の米国順位が大幅上昇したのも、大統領が変わって女性の閣僚を増やしたから。政権の意識が変われば政策も変わるので、経済業界や社会の意識も変わる。政治が率先してジェンダー平等を実現できるはずなのに、日本は逆で、政治が変わらないから社会を変える政策が実現できない。女性議員が衆議院で1割未満しかおらず、あらゆる業界の意志決定層に女性を増やすための政策が重要課題になりにくい。女性の声が届きにくい政界が女性にとって魅力ある職場になっておらず、政治家になろうと志す人が少ないという悪循環になっている」と話す。

今年の総選挙で女性議員を増やすことができるかも課題だが、1人しか当選しない小選挙区制は現職有利と言われ、女性でなくても新規参入しにくい制度だ。三浦氏は「女性議員増は、最も議席が多く女性比率の低い自民党にかかっている。候補者の3割を女性とする数値目標を公約に盛り込むと言っていたが、すぐにでも実践してほしい。各国を見ても政権交代をするときが一番新陳代謝が進む時なので、現職優先の日本ではがらっと変えるのは難しいかもしれない」としつつ、森喜朗元首相の性差別発言に厳しい反応が起きるなど社会の意識変化が起きているとして「有権者がもっと女性候補者を増やせと要求するなどの世論の流れがあれば、政治も変わっていく」と期待を込めた。

発言するモルドバ共和国のアンナ・ヴァタマニュク臨時代理大使。(撮影/宮本有紀)

GGGIが発表された31日には、東京・永田町で駐日EU代表部主催のイベント「ジェンダー平等と若者世代」が行なわれ、5カ国の駐日大使や国会議員、若者世代の活動家が参加。賃金格差や性暴力、政治参画などのジェンダー課題について語った。

モルドバ共和国のアンナ・ヴァタマニュク臨時代理大使は「ジェンダー平等の教育が最も重要だと思う。我が国は教育こそが貧困や差別に対する解毒剤になると考えている。私は法学部を選んだ。当時いい弁護士や裁判官になるためには男性でなければならないという考えも残っていたが私の大学は違い、勇気をもらった。皆さん一人ひとりが男女不平等の固定観念を壊すナタの一振りとなってほしい」と発言。スウェーデンのペールエリック・ヘーグベリ大使が「ジェンダーの平等は〈女性の問題〉ではない。私は男性として提言する。会議に男性しか参加していないのならなぜかと自問して。もし良い理由がなければ、会議を延期して必ず女性を参加させるようにしよう。もし意思決定の場にいたら、その決定が男性と女性に違いを与えるかどうかを考えて違いを与えると思うなら、もう一度考え直してみて」と述べるなど各国大使が提言した。

発言する染矢明日香さん(中央)。(撮影/宮本有紀)

それを受け、若者世代も発言。性教育の普及や緊急避妊薬を入手しやすくするための政策提言などの活動をしているNPO 法人ピルコン理事長の染矢明日香さんは「意思決定の場に女性が少ないということが、リプロダクティブヘルス/ライツの実現を阻むハードルになっているとも感じる。権利を侵害されていることすら気づいていない若者たちがまだ多い。スウェーデン大使の、男性女性というとことを区切らずに、というお話も非常に共感するところ。あらゆる性別の人が、自分たちそして社会にとってより良い社会を実現していくために必要なことを皆さんと考えていきたい」と述べた。

「マイノリティの声をどれだけ積極的に拾い上げられるかが政治の領域では重要」と話す一般社団法人fair 代表理事の松岡宗嗣さん(右端)。(撮影/宮本有紀)

LGBTQに関する情報発信をしている一般社団法人fair 代表理事の松岡宗嗣さんは「自分はゲイという意味ではマイノリティだが、男性という部分ではマジョリティなので、その特権性をどれだけ意識して行動できるのかを考えた」として「周縁に追いやられやすい人たちの声をどれだけ拾い上げられるか、ということの重要性」を指摘。「女性にも広がりにくい声がある。貧困の状況にある女性、移民や難民、障害のある女性、レズビアンやバイセクシャル、トランスジェンダーの女性など性的マイノリティ。そういった声をどれだけ積極的に拾い上げられるかが政治の領域では重要になってくると思った」などと話した。

「男女共同参画社会の実現」を目指し、第5次男⼥共同参画基本計画に若者世代の意見を反映させるために発足した30歳未満の若者でつくるプロジェクト「#男女共同参画ってなんですか」代表の櫻井彩乃さんは、「アリバイ作りのための若者からの意見聴取ではなくて、あらゆる政策決定の場に若者を参加させる、意思決定権を持たせるということが非常に重要。意思決定の場にいる大人たちが、若者の声をどれだけ信じるか、どれだけ必要だと思うかが本当に大事。日本をよくしたいというユースの火を消さないで欲しい、一緒にその火を灯し続けられたら」と訴えた。

(宮本有紀・編集部、2021年4月9日号)

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