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「放送を語る会」中心メンバーの戸崎賢二さん死去 
視聴者運動の羅針盤、逝く

小滝一志|2021年2月17日4:45PM

2014年11月、「放送を語る会」25周年記念集会に登壇した戸崎賢二さん。(撮影/増田康雄)

本誌連載「メディアウオッチ」執筆者の一人、元NHKディレクターの戸崎賢二さんが1月11日に亡くなった。81歳だった。

NHK時代は教育・文化番組のディレクターとして、記憶に残る番組をいくつも制作した。定年退職後は愛知東邦大学教授としてメディア論を担当。学生の指導にもあたった。並行して市民団体「放送を語る会」の中心メンバーとして、NHKをはじめとするテレビメディアの検証・論評に重要な役割を果たし、新聞雑誌への寄稿にも精力的だった。

「放送を語る会」の活動の柱の一つに「テレビ報道のモニター」がある。2003年のイラク戦争報道に始まり、20年の新型コロナ報道まで22回実施。その都度報告書を公表しているが、その大半のまとめ作業を戸崎さんが担当した。一言一句を疎かにしない戸崎さんと各番組モニター担当者との間で、推敲をめぐり毎回交わされたメール上での丁々発止の厳しいやりとりは、「放送を語る会」メンバーたちの語り草になっている。

「放送を語る会」が発表する見解や申し入れ文書の作成も戸崎さんに負うところが大きかった。戸崎さんは、文字通り「放送を語る会」の理論的支柱、羅針盤だった。

亡くなる直前の1月8日に著書『魂に蒔かれた種子は』があけび書房から出版された。死を予感されたのか昨年11月頃から急に出版社に編集作業を急がせたという。普段のテレビメディアへの舌鋒鋭い論評と違い、ディレクターとしての試行錯誤、若い学生に講義を通じて感じたこと、家族のこと、幼少期の思い出などの人間味溢れるエッセイで、私たちに向けた戸崎さんの遺言とも読める一冊だ。

戸崎さんには一つやり残したことがある。『放送を語る会30年史』の編纂だ。昨年、創立30年を機にメンバーに全体構想を提案、年表作成にも取り掛かっていた。さぞや心残りだろう。『30年史』刊行は残された私たちへの宿題である。

(小滝一志・放送を語る会事務局長、2021年1月8日号)

 

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