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大飯原発の設置許可取り消す判決 
大阪地裁

小山英之|2021年1月5日6:39PM

12月4日、大阪地裁前で勝訴判決を伝える原告団メンバー。(提供/原告団)

東日本大震災後、再稼働した関西電力大飯原発3号機・4号機(福井県おおい町)の安全性に問題があるとして、近畿6府県と福井県などの住民約130人が、国の原子力規制委員会(以下、規制委員会)が関電に与えた設置許可の取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁(森鍵一裁判長)は12月4日、設置許可を違法として取り消す判決を出した。原発再稼働にお墨付きを与えてきた規制委員会の審査の欠陥と不合理さを指摘したもので、原発再稼働の前提が大きく揺らぐ、画期的な判決だ。

判決は、関西電力が策定した基準地震動の妥当性に関連して、規制委員会が「算出された地震規模に何らかの上乗せをする必要があるかどうか」を検討していなかったことを指摘。そのうえで「このような調査、審議および判断の過程には看過しがたい過誤、欠落がある」と認定した。規制委員会は、原則としてすべての原発について同じような審査をしているため、再稼働中や再稼働をめざしている他の原発についても影響を与えることになる。

裁判で最大の争点となってきたのは、3号機と4号機の耐震性を判断するための基準地震動を策定する際に行なわれた地震規模の算定が、新規制基準に適合しているとした規制委員会の判断に不合理な点があるかどうかだった。基準地震動の妥当性を厳格に確認するために規制委員会が定めた「審査ガイド」には、このような一文が入っている。

「(地震規模を設定する)経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある」

今年1月30日、裁判をどのように進行させるかを話し合う裁判所での協議で、裁判長は次のように指摘した。審査ガイドにある「ばらつきも考慮されている必要がある」という部分は、福島原発事故後の新規制基準になって初めて設定されている。被告はその意味をよく考え、「ばらつき」として少なくとも標準偏差を考慮しても設置許可基準規則を満たすことを具体的に示せ――というものだ。

しかし、被告の国は、この指示に何らまともな回答を示すことができなかった。国の主張に対して判決文は、逐一具体的に批判している。国が控訴する場合、この判決の判断に具体的に反論しなければならないが、それができるくらいならすでに行なっていたであろう。

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